ダイヤの変更に合わせて、50000形(VSE)が定期運行を終了することが小田急から発表されました。
発表の直後から、早すぎる引退を惜しむ声が鉄道ファンの間で溢れており、ダイヤの変更以上のインパクトがあったようです。

20211218_01

2005年に営業運転を開始してから約17年で定期運行を終了、そして約18年で引退することとなるVSEは、なぜこんなにも早く引退することとなってしまうのでしょうか。

公式に発表されている引退の理由

JR各社からダイヤ改正の発表がある2021年12月18日、それと合わせるように小田急もダイヤの変更を発表しました。
利用動向に合わせた運転本数の見直しが中心となっているためか、小田急はダイヤ改正という表現を避けているようです。
そして、この発表に合わせて、VSEが定期運行を終了することも発表されました。

以前からあまり長くはないといった噂がありましたから、正直なところ私自身はそこまで驚きはありませんでした。
しかし、新型のロマンスカーとして登場した頃から見てきた身としては、やはり残念で寂しい気持ちです。

発表の中では、引退の理由について多くは触れられていません。
車両が老朽化していることや、主要機器の更新が困難であるとの記載があるのみです。

製造から20年程度の時期が近付きつつあることから、機器や設備の老朽化が進んでいることは間違いないでしょう。
特急用の車両で走行距離も長くなるため、そろそろ大きく手を入れるべき時期であるといえます。
小田急が車両の更新を行う時期に達しつつあり、老朽化が進んでいること自体は間違いありません。

その一方で、このまま引退させるという事実は、車両の更新をしないことを意味しています。
主要機器の更新が困難とは書かれていますが、車両の更新自体ができないのではなく、更新をしないという判断になったというのが実際のところでしょう。
車両の老朽化は一つ目の理由ですが、この判断へと至ったのには、他にも理由がありそうです。

ホームドアの設置と保守性の悪さ

ホームからの転落事故を防止するため、近年になってホームドアの設置が各社で進められるようになりました。
小田急は設置のペースが遅めですが、その理由として対応できない車両が在籍しているという問題がありました。



車両と車両の間に台車がある連接構造を採用しているVSEは、小田急に在籍する他の車両とは1両の長さが異なっており、ホームドアに対応させることが困難なのです。
ホームドアの構造を工夫し、VSEの扉の位置に対応させることは不可能ではありませんが、ある程度登場から年数が経過している2編成の車両のために、ややこしい設備を用意するメリットはほとんどないといえます。

VSEと同様にホームドアの対応に問題があり、1000形のワイドドア車も廃車が進められていますが、それに合わせたこのタイミングが、VSEの引退時期としても都合が良かったということになります。
ホームドアへの対応が困難であること、これが二つ目の理由です。

最後に、三つ目の理由です。
それは連接車であることに起因する、保守性の悪さが考えられます。

小田急のロマンスカーといえば、連接車であるというのがかつての常識でしたが、現在はVSEの2編成のみとなってしまいました。
昔は200両近い連接車が在籍していたことを考えると、20両ぐらいでと思うかもしれませんが、20両しかないからこそ、保守性の悪さが際立ってしまうのではないでしょうか。

その後のロマンスカーが連接構造を採用していないことから、VSEを更新によって延命する選択をした場合、たった20両のために保守性の悪さと付き合っていかなくてはいけなくなってしまうのです。
小田急で最後の連接車となったVSEは、結果的に少数派の車両となってしまい、車体傾斜制御のような複雑な装備をしていることも災いしてしまったのでしょう。

おわりに

ホームドアに対応できず、連接構造に起因する保守性の悪さがある中で、車両の更新時期を迎えた小田急のVSE。
これらの3つの理由が絡み合い、やむを得ず引退という判断に至ったのだと考えられます。

早すぎる引退はあまりにも残念ではありますが、最後の活躍を応援しつつ、トラブルが起きないことを心から願いたいと思います。