乗客が乗り降りをするために、鉄道車両では欠かすことができない設備となっている乗降扉。
多くの車両は、乗降扉のために戸袋が設けられていますが、その部分に窓がある車両とない車両があります。

近年の鉄道車両は、製造時から設けられていない車両が圧倒的に多くなり、改造によって埋められるケースも相次ぎました。
小田急においては、3000形以降の車両で戸袋窓を設けなくなり、従来の車両は埋めずに残されていますが、これはなぜなのでしょうか。

小田急の車両と戸袋窓

小田急の車両といえば、以前は戸袋窓があることが当たり前でした。
そう感じるのは当然のことで、以前は在籍する通勤型車両の全てに戸袋窓があったのです。

両開きの扉が主流になって以降は、鉄道会社によって戸袋窓を設けるか設けないかの方針が異なっており、小田急は設ける側の鉄道会社でした。
小田急が戸袋窓を設けていた理由として、車内を明るくするという目的があり、日中は室内灯を消すことが当たり前だった昔は、設けている効果も高かったといえます。

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その一方で、戸袋窓を設けることは、車体が重く腐食しやすくなる、清掃の手間が発生する、製造時の工程が増えるといったデメリットがあり、近年は設けないことが当たり前となってきました。
小田急はこれらのデメリットよりも、車内の明るさのために戸袋窓を設けており、乗客が車内で少しでも快適に過ごせることを優先していたのでしょう。

しかし、日中も室内灯を使うことが当たり前となった現代においては、戸袋窓を設けるメリット自体がなくなってしまいました。
戸袋窓を設けなければ広告枠も確保しやすくなるため、近年の鉄道車両ではワイドドア車等の特殊なケースを除いて、ほとんど設けられなくなっています。
小田急において、戸袋窓を設けるか設けないかの転換点となったのは、3000形の2次車が登場したタイミングで、それまでの車両とは一気にスタイルが変化しました。

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ワイドドア車となっている1次車では戸袋窓が設けられていましたが、標準車両の色が濃くなった2次車以降では、ついに小田急からも戸袋窓が消えてしまいました。
これも時代の流れとはいえ、登場当時はその事実にショックを受けたことを記憶しています。

小田急はなぜ戸袋窓を埋めないのか

小田急には、現在も戸袋窓が設けられている車両が多く存在します。
8000形、1000形、2000形の3形式と、3000形の1次車がそれに該当し、全国的にも比較的多い鉄道会社といえそうです。

近年は車両の置き換えによって徐々に数を減らしつつあり、5000形の増備が始まって以降は一気に減少が始まっています。
その一方で、戸袋窓を埋めることはしていないため、該当する車両の置き換えが終わるまでは、これからも見ることができそうです。

他の鉄道会社では、デメリットを解消するために、戸袋窓を埋めた車両も散見されますが、小田急がそれを行わないのはなぜなのでしょうか。
こんなことを考えたのは、日頃から仲良くしていただいているねこ常務さんの記事がきっかけでした。



小田急が戸袋窓を埋めない理由については、発表されていることがないので真相は不明です。
推測ではありますが、昔から車内の開放感や明るさを重視している会社ですから、わざわざ埋めるということまではしたくなかったのだと考えています。
3000形で戸袋窓を設けなくなったことも、どちらかといえば外的要因によるところが大きそうですから、本心としては今でも設けたいと思っているのかもしれません。

それ以外にも、あまり腐食の心配がない車体だということも、埋めない理由として考えられます。
1000形以降の車両はオールステンレスの車体であり、8000形については腐食対策が徹底されているため、戸袋窓にも工夫がされているのだと思われます。

腐食の心配がそこまでなく、他に埋めたい積極的な理由がないことで、明るさのために残しているということなのかもしれません。
ステンレスは綺麗に埋めることも難しく、1000形では妻窓を埋めたものの、デザイン上のデメリットもあることから、小田急としては戸袋窓を埋めるのは避けているのでしょう。

おわりに

現在も比較的戸袋窓がある車両が残る小田急ですが、この先さらに数を減らしていくことだけは間違いありません。
時代の流れとはいえ、外の光が沢山入ってくる小田急の車両が消えていくことは、少し寂しく感じます。