代々木上原から登戸まで、全長11.7kmが複々線区間となっている小田急の小田原線。
2018年3月19日のダイヤ改正から本格的に使用を開始し、ラッシュ時を中心に列車が増発されました。

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しかし、これから快適な通勤や通学が実現できると思っていた矢先、新型コロナウイルス感染症の影響により、輸送人員は大きく落ち込んでいます。

大きく減った小田急の輸送人員

コロナ禍でテレワークが一気に普及したことで、鉄道の輸送人員数は大きく減少しました。
数字でも明らかになっていますが、体感的にも以前よりは混んでいないことが分かり、各鉄道会社は苦しい状況が続いています。

小田急は東急や京王と同じく定期客の減少が顕著で、その背景には新宿や渋谷にテレワークがしやすい企業が集まっているからといわれています。
感染状況が改善すると、電車が混んできたなと感じる部分はありますが、アフターコロナでも通勤需要は元に戻らないといわれており、私自身も間違いなくそうなると感じています。

そもそも、人口減少等によって輸送人員数はゆるやかに減少していくはずでしたが、テレワークの急速な普及によって、それが想定以上に早く訪れてしまったといったほうがよいのかもしれません。
平成の時代に、様々な犠牲を伴ってようやく完成した複々線でしたが、完成してすぐにこのようなことになるとは、誰が予想できたのでしょうか。

複々線をどうやって活用していくのか

莫大な投資によって生まれた複々線ですが、今後輸送人員数が減ることはあっても、増えることはほぼないといえそうです。
沿線の開発が進んで短期的に微増する可能性はあるとしても、この複々線を輸送力の面で最大限活用することは厳しいと思われます。

しかし、既に完成してしまった複々線であり、輸送人員数が減少したから複線に戻すというわけにもいかないため、投資効果を最大化するためには活用方法を模索するしかありません。
電車が空くことで、利用者としては快適な通勤や通学が可能となりますが、小田急としては収益性が悪化するだけですから、それだけではない何らかの対応が必要になります。

そのヒントとなりそうなのが、3月12日のダイヤ変更で増発されるモーニングウェイ号です。
朝のラッシュ時に3本が増発されますが、余裕のある複々線を活用して、有料の着席列車を沢山走らせることは、ポジティブな変化といえます。
朝の着席需要はまだまだありそうですから、電車が空いた分をモーニングウェイ号にすれば、収益性の改善に繋がりそうです。

その一方で、モーニングウェイ号に使われるのはロマンスカーであり、車両の絶対数には限りがあります。
また、車両の特性上乗降に時間がかかってしまうため、やたらと増やすことも難しいのが現実でもあります。

小田急がその選択をする可能性はあまり高くなさそうですが、他社で見られるようなデュアルシートを採用した車両も導入し、モーニングウェイ号とは別の位置付けの列車を走らせるのも手かもしれません。
快速急行や通勤急行の一部車両だけが座席指定制といった列車があれば、利用者としては乗車するタイミングを合わせやすいといったメリットもありそうです。

いずれにしても、輸送人員数が減少していく状況だからこそ、輸送力に余裕が生まれる複々線を活用するチャンスだとも思います。
他社よりも快適に通勤や通学ができる列車が沢山走っており、利用もしやすければ、それは結果的に沿線の価値を高めることにも繋がりそうです。

おわりに

ピンチはチャンスであると、よくいわれます。
複々線が完成した直後にこのような状況になってしまいましたが、小田急はきっとこのピンチをチャンスに変え、新しい姿を見せてくれると信じています。
編成中の1両だけが座席指定制、そんな快速急行を見てみたい気もします。