小田急では、2022年の春から小児IC運賃が一律で50円に改定されます。
乗車する距離に関係なく50円となることから、最もお得になるパターンは新宿から小田原まで乗車した場合で、445円が50円となります。

20200118_01

子育てをしやすい沿線イメージの定着や、子供を連れた大人が乗車する機会の創出を狙ったこの変更は、小田急にどのような未来をもたらすのでしょうか。

子育てをしやすい沿線を実現すると宣言した小田急

小田急が小児IC運賃を一律で50円にすると発表したのは、2021年11月のことでした。
子育てを応援するポリシーを定め、「こどもの笑顔をつくる子育てパートナー」であることを宣言するという発表です。

その発表の中に、小児IC運賃を50円にするという内容が盛り込まれており、様々なメディアで取り上げられました。
これ自体は各方面で記事になっていたことから、ご存知の方も多いことと思います。

そして、1月11日には3月12日からの実施となることが発表され、ダイヤの変更と合わせられることが分かりました。
同時に通学定期券やフリーパスについても低廉化され、春から一気に施策が動くこととなります。

しかし、個人的に興味深いと感じたのは、小児IC運賃を50円にするということ等よりも、子育てをしやすい沿線を目指すと明確に発信した、小田急の覚悟です。
これを宣言した以上、中途半端なことはできないでしょうから、小田急がそれだけ本気で取り組んでいくことを、覚悟のうえで宣言したといえるのではないでしょうか。
子育てがしやすい沿線はどの鉄道会社も目指しているでしょうが、ここまで強く打ち出すということは、重い意味を持つからです。

それを象徴的に表す施策が、今回の小児IC運賃を50円にすること等であり、まずは運賃が安いからと乗車する機会が創出され、後々は運賃が安いから小田急沿線に住むことを考えようということに繋がっていくのでしょう。
期間限定で運転した子育て応援トレインの常設化等も検討されており、これから次々と関係する施策が発表されてくるのではないかと思います。

子育てをしやすい小田急沿線という未来

親子で外出する際の運賃が安いことは、当然子育て世代にはプラスです。
その一方で、効果は限定的になるかもしれないと考える部分もあります。
そもそも、その恩恵は小学生の子供がいる家庭にしかなく、もっと幼ければ運賃自体が発生しないからです。
また、小田急での効果が可視化されれば、追随する鉄道会社が出てくることは容易に想像できます。

小田急もその点は前提として理解しているでしょうし、ベビーカーのシェアリングサービスを駅に本格導入していく予定について触れていることからも、小児IC運賃を50円にすることは施策の一つでしかないのでしょう。
つまり、子供を連れた状態でストレスなく利用できる状態が、小田急を利用するうえでの子育てのしやすさになってくると思われます。
実際には、これに沿線自治体の諸問題も絡んできますが、あまりにもややこしくなるので今回は忘れておきましょう。

そして、最終的な競合になると思われるのは、鉄道会社ではなく自家用車です。
私自身も子育てを経験していますが、子供が幼い時は鉄道で外出するのが大変で、車を使っての外出がほとんどでした。
沢山の荷物があっても問題ないこと、ベビーカーの持ち歩きやすさ、子供が騒いでも大丈夫等、鉄道での移動と比べた場合のメリットは数えきれないほどあります。

だからこそ、小田急を利用しての子育てがしやすい沿線にするためには、ハードとソフトの両面での取り組みが必須になると思います。
既に乗務員の方々のサービスは素晴らしいものがありますし、子供に手を振る光景を見かけると、こちらまで良い気分になります。
これらを発展させて、子供の乗車回数によってノベルティがもらえる等、そういった取り組みをしてみるのも面白いでしょう。

ソフトの面では、他の利用者の理解といったものも必要となるのは間違いありません。
子育て応援トレインのような取り組みが強化され、利用者も巻き込んでの意識改革を進めていくことになると思いますが、現状では車内の子供に対する世間の目は冷たいのが実情であり、社会自体が変わっていくべきタイミングともいえそうです。
全ての親がきちんとしているわけではありませんが、子供というのは理屈ではどうにもならない時が多々あり、それを社会全体で支えていくことこそ、少子化が進む今求められることのように思います。

様々な関係者を巻き込み、子供が乗ってくると車内に笑顔が溢れる、そんな小田急が実現すると良いなと個人的には思いました。

おわりに

小児IC運賃を50円にすることで、より一層注目されることになる小田急の子育て支援への取り組み。
これ自体は序章であると考えた場合、これから先にどんな変化があるのか、一人の小田急ファンとして楽しみにしています。