3月12日に行われるダイヤの変更によって、日中に運転される列車の本数が減らされる小田急の多摩線。
多摩急行の登場や、JR東日本との相互直通運転を開始することで列車の本数を増やしてきましたが、一気に本数を減らす方向へと舵を切ることとなります。

日中に運転される列車の本数が最も多い状態となったのは2016年以降ですが、この対応によって多摩線の利用者数は増加したのでしょうか。

多摩線の運転本数が最も多くなった時期

多摩線の運転本数が増えるきっかけとなったのは、2002年に多摩急行が登場したことでした。
営団地下鉄(現在の東京メトロ)千代田線との直通運転を行う列車で、1時間に2本程度を目安に運転されることとなります。
これによって、当初は各駅停車が若干減らされたものの、その後のダイヤ改正を経て多摩線の運転本数は1時間あたり8本となり、輸送力の増強が図られています。

1時間あたりの運転本数が最大となったのは2016年のことで、JR東日本の常磐緩行線とも相互直通運転を開始、ダイヤ自体が30分ヘッドから20分ヘッドとなりました。
多摩線内の運転本数は、優等列車が1時間あたり3本となったことで増加し、過去最大の9本となりました。

20180318_02

その後、2018年に複々線が完成したタイミングで運行パターンが変更され、優等列車は急行で新宿との間を行き来するようになりました。
通勤急行の登場によって京王への対策も強化され、小田急が本気を出してきたと当時は感じたものです。

2016年以降に多摩線の利用者数は増加したのか

列車の運転本数が最大になって以降、そして2018年に新宿とを結ぶようになって以降、多摩線の利用者数は増加したのでしょうか。
まずは、小田急永山と小田急多摩センターの1日平均乗降人員について、2013年以降で見てみたいと思います。

【小田急永山】
2013年:29,853
2014年:29,983
2015年:30,737
2016年:31,040
2017年:31,203
2018年:31,338
2019年:31,056
2020年:22,278

【小田急多摩センター】
2013年:48,961
2014年:48,554
2015年:49,809
2016年:50,585
2017年:50,319
2018年:51,318
2019年:51,315
2020年:31,339

結果はご覧のとおりとなっており、2016年を境として利用者数が増えたといえるような結果にはなっていません。
気になるのは通勤急行が登場した2018年ですが、数値だけを見ると若干ながら増えているようにも見えます。
しかし、これには落とし穴があり、残念ながら2018年以降は京王も1日平均乗降人員が増加しているため、通勤急行の登場によって小田急を利用する人が増加したと結論付けるのは無理があります。

直近については、新型コロナウイルス感染症の影響で下がっており、2020年を見る限りその影響は深刻といえます。
そして、列車の運転本数を増やした2016年以降、多摩線の利用者数は増えていないというのが実際のところのようで、今回運転本数を減らすのも分からなくはありません。
列車の本数や行先を変えても、利用する路線を変えることにはあまり寄与しないのかもしれませんね。

おわりに

今回の記事では、小田急と京王の名前を出しましたが、両社の優劣を比較するものではなく、あくまでも運転本数を増やした結果がどうであったのかを検証するためです。
両社の名前があると、なぜか優劣の比較による論争へと発展することが多いため、普段はできるだけ話題にするのを避けるのですが、結果を検証するために今回は盛り込むこととしました。

意図や背景をご理解いただけることを願いつつ、今回の記事を終わりにしたいと思います。
そして、多摩ニュータウンの輸送を担う両社が、これから先にどのような手を打っていくのか、そんなことも楽しみにしています。