昔より数は減ったものの、前面展望席を備えた車両のイメージが強い小田急のロマンスカー。
運転室を2階に上げ、乗客が車両の最前部で前を見て楽しめるのは、ロマンスカーの魅力の一つでもあります。

通常よりも運転室が高いことで、ロマンスカーの停止位置は通常の車両とは扱いが異なりますが、どのようにして位置を合わせているのでしょうか。

車両を停車する位置を示す停止位置目標

現代では当たり前となった整列乗車ですが、これは両数に応じて車両の停止位置が決められているからこそできる運用で、駅には両数に応じた車両の停止位置を示す停止位置目標というものが設置されています。
停止位置目標は、車両の両数によって複数が設置されていることが多いものの、複数の両数が同じものを使用する場合や、前寄せとすることで全ての両数で同じ停止位置目標を使用する場合もあります。

停止する両数は、6や8といった数字を書いて示すことが多く、小田急も同様となっています。
設置の方法は線路から立ててある場合がほとんどですが、一部の駅では枕木に置かれている場合もあります。

小田急ならではの特殊な停止位置目標としては、ロマンスカー専用のものがあげられます。
現在はTKという表記が標準となっており、特急を示す省略表記だと考えられます。

ロマンスカー専用の停止位置目標

小田急の場合、停止位置目標は低い位置にあることが基本となっていますが、前面展望席を設けているロマンスカーの場合は、それを目視で確認することが困難です。
車高が高い車がそうであるように、低い位置の死角が多くなってしまい、停止位置目標に合わせることは至難の業となってしまいます。

そこで、前面展望席を設けているロマンスカー用には、高い位置に専用の停止位置目標が設置されています。

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この写真の中央にあるものがそれで、上屋から吊るされていることが分かります。
現在はVSEとGSEがこの停止位置目標を使用しており、ロマンスカーが停車する可能性がある駅に設置されています。

表記は時期によって異なり、古くはNSEといったものが使われ、LHV等の表記を経て現在はTKとなっています。
その他の表記も見られ、その変遷は意外と複雑なようです。

この停止位置目標の面白い点は、車両の先端を合わせるのではなく、運転室の窓の位置を基準に停車させることです。
車両の先端までは運転席から距離があって合わせにくいため、そのようになっているのでしょう。

おわりに

30000形や60000形のようなロマンスカーが多数派となり、高い位置にある停止位置目標を使う機会も少なくなりました。
窓から横を見ながら車両を停車させる光景は、少しずつ貴重なものとなってきているのかもしれませんね。