特急料金を必要としない列車としては、小田急で最上位の種別となっている快速急行。
都心部を中心に多くの駅を通過し、多くの利用者が狙って乗車する列車でもあります。

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速達列車となっている快速急行ですが、小田原線内にだけは各駅に停車する区間が存在します。
通過運転をすれば、さらに速達列車としての価値は高まりますが、なぜそれをしないのでしょうか。

ロマンスカーの存在価値と輸送需要

ほとんどの区間で速達運転を行い、沢山の駅を気持ちよく通過する快速急行ですが、小田原線の本厚木から新松田までは各駅に停車します。
急行は開成にも停車し、快速急行は通過となっていますが、新松田を境に種別を変更する快速急行も多く、停車駅には気を使っていることがうかがえます。

本厚木から新松田までの間には六つの駅があり、かつ駅間距離が長いという特徴があります。
他の区間と比べても圧倒的に長いため、快速急行が通過運転を行う必要がそこまでないというのは理由の一つとして考えられます。



この区間の駅では、伊勢原と秦野にロマンスカーが停車しています。
それらの駅にだけ停車させ、他の駅を通過させれば快速急行の価値は高まるといえますが、それを行うとロマンスカーの価値が下がってしまうということも、通過運転を行わない理由として考えられます。
さらに、通過させる場合には別の列車を運転する必要があるため、輸送需要を考慮すると難しいところなのかもしれません。

線路配線の都合による区間運転の難しさ

ロマンスカーの存在や輸送需要を無視した場合でも、通過運転を行うことが難しい事情がこの区間にはあります。
それが小田原線の末端区間特有の線路配線で、小田原方での区間運転が難しいのです。

快速急行が本厚木から先で通過運転をする場合、通過となる駅のために別の列車を走らせる必要がありますが、本厚木までは各駅停車が多く走っています。
これは本厚木から小田原までの区間運転を行えば解決しそうですが、本厚木で小田原方に折り返すことは、線路配線の関係で現実的ではありません。

相模大野や町田からであれば、折り返し自体はしやすくなるものの、今度は一部の区間で列車が過剰になってしまいます。
江ノ島線の折り返し列車とも相互に干渉してしまうため、ダイヤが乱れると影響も大きくなりそうです。

折り返しが難しいとなれば、本厚木止まりの各駅停車を新松田まで延長して運転する方法もありますが、この区間に追加で8両や10両を走らせるとなると、長編成の車両を増やす必要が生じてしまいそうです。
そして、10両が1時間に9本も走るのは、さすがに輸送力が過剰といえそうです。

このように、様々な理由を総合的に加味すると、快速急行が各駅に停車することが最も合理的で、バランスの良い状態となっていることが見えてきます。
快速急行が各駅に停車する今の状態が、やはり最適解なのでしょう。

おわりに

快速急行や急行で小田原に向かう際、本厚木を過ぎると急にのんびりしたように感じます。
比較的自然が多く残る区間であり、各駅に停車しながらそんな雰囲気を味わうのも、それはそれで楽しいのかもしれませんね。