まもなく50000形(VSE)が定期運行から引退し、大きな岐路を迎えることとなる小田急のロマンスカー。
3000形(SE)以来の伝統となっていた連接車の歴史が途絶え、今後新たな連接車が登場しない限りは、ボギー車へと統一されることになります。

まだ比較的新しいにもかかわらず、突然引退することとなったように感じるVSEですが、その未来は70000形(GSE)が登場した時点で見えていたのかもしれません。

ロマンスカーとしては初の組み合わせで登場したGSE

2編成だけが残っていた7000形(LSE)の置き換え用として、GSEは2018年に営業運転を開始しました。
60000形(MSE)の増備によってロマンスカーの展望車は減少を続けていましたが、LSEを置き換えるという点を重視したのか、GSEは久々に前面に展望席を設けた車両となりました。

20180203_01

4編成にまで減少していたロマンスカーの展望車は、こうしてそれ以上は数を減らすことなく推移し、LSEの置き換え後はVSEが2編成、GSEが2編成、合計4編成で落ち着きました。
最盛期に比べればかなり少なくはなったものの、ロマンスカーの性格が変わりつつあることを実感する編成数になっているといえます。



久々の展望車となったGSEですが、ロマンスカーとしては初の組み合わせが見られることが特徴です。
それは前面に展望席を備えながら、20m級の一般的な車両のサイズとなっている点で、連接車ではないボギー車とされました。
長いロマンスカーの歴史の中で、展望車でありボギー車であるというパターンは過去になく、3100形(NSE)の流れと、30000形(EXE)の流れの両方を合わせたような車両となっています。

GSEが登場した時点で見えていたVSEの未来

ロマンスカーブランドの復権を目的として登場したVSEは、GSEが登場する段階で約13年が経過していました。
効率性だけを優先せず、夢を沢山詰め込んだVSEは、箱根等への観光輸送の主役として活躍することとなりますが、2編成が増備されただけで終わってしまい、結果としては使い勝手のよいMSEが大量に増備されることとなります。

VSEが2編成だけで終わってしまった理由は明確になっていないものの、コストや効率性の面であったのだろうということは、なんとなく想像できます。
大量に増備されることにはならなかったものの、2編成だけという希少性が幸いし、かえって注目された面はあったのかもしれません。

VSEが観光輸送の主役として活躍する中で、MSEの増備によって観光輸送を重視した設計の車両は続々引退していきました。
最終的にはLSEとVSEの2編成ずつが観光輸送向けとして残りますが、そこで登場したのがGSEだったのです。

鮮やかな車体が目立つGSEですが、実際にはかなり現実的な仕様でまとめられている車両となっており、観光輸送を主な用途としつつも無駄がない仕様となっています。
4両と6両を組み合わせ、最大10両で運転できる車両とは異なりますが、箱根湯本への乗り入れが可能な7両としつつ、ロマンスカーらしさを演出する展望車とする等、メリハリがある車両に仕上がっています。

GSEが登場した時点で、VSEは小田急で唯一の連接車となり、20m級ではない車体も他形式にはない特徴となってしまいました。
そして、GSEの登場に先立つ2016年からは、ホームウェイ号でもVSEは使われるようになっており、既に特別扱いは終わりつつありました。
GSEは登場直後からホームウェイ号にも充当され、VSEのように特別扱いをするという方向性もありませんでした。

この時点でVSEがいつまで走る見込みであったのかは分かりませんが、既に未来は決まりつつあったのかもしれません。
観光輸送としてのロマンスカーの立ち位置が定まりつつあり、その結果がGSEという車両を生んだのだとすれば、VSEは既に異端車となりつつあったといえます。
生まれた時代が違えばもっと長生きができたのかも、VSEを見ているとそんなことを思わずにはいられませんでした。

おわりに

前面に展望席を設けたロマンスカーとして登場しながら、VSEとGSEはあまりにも異なる性格を持っているといえます。
GSEが現実的な仕様で登場した時点で、VSEの先行きは暗い方向へと進み始めていたのかもしれませんね。