新型コロナウイルス感染症の影響により、鉄道会社各社は大きな打撃を受けています。
小田急においてもそれは例外ではなく、箱根等の観光客が減少したほか、テレワークの普及によって通勤需要も減少しました。

そんな中、2021年度の第3四半期決算発表において、保有車両数の60両が削減可能であるとFAQ内に記載されています。
この記載が何を意味しているのかを、今回は考えてみたいと思います。

ダイヤの変更後は保有車両数の60両が削減可能

通勤型車両としては久々の新形式となる5000形が登場し、古い車両の置き換えが進められていた小田急ですが、ファンにとっては衝撃的な内容が公表されました。
それは、2022年3月12日に行われるダイヤの変更により、保有車両数の60両を削減することが可能となるというものです。

今回のダイヤ変更は全体的に減便が目立っており、「ダイヤ改正」という表現をあえて避けているのも印象的です。
都心部の複々線化を進め、年々輸送力を増強してきた小田急にとっては、ここまで大きく後退せざるを得ないのは初めての経験でしょう。

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1993年に保有車両数が1,000両を超えた小田急は、その後も少しずつ車両を増やし、近年は1,100両前後となっていました。
今後60両が削減されると仮定した場合、1990年代の水準に戻っていくことを意味しています。
ここ数年の状態が、結果的に保有車両数のピークとなる可能性が高くなり、今後は少しずつ減少を続けることとなりそうです。

小田急ファンとしては、どの車両が廃車になるのかという点に興味が集中してしまいますが、ロマンスカーの50000形(VSE)や、1000形の未更新車であることに疑いの余地はなく、それでも足りない分は他の車両に何らかの動きが出てくるのでしょう。
その一方で、5000形の増備が中断されるのかという点は判断ができず、車両の置き換え自体は継続する可能性もあります。
最終的に保有車両数を減らす方針ということだけが、現時点で分かっていることになります。

保有車両数の削減によって示された方向性

ダイヤの変更による減便は、その背景に運用数を減らす目的があることはなんとなく分かっていました。
つまり、減便と保有車両数の削減はセットであり、コストの削減がそれだけ急務であることを意味しています。

しかし、パンデミックが終わる日のことを考えた場合、一気に車両を増備することは容易ではありません。
保有車両数を減らすということは、この先も輸送需要が元通りになることはないと判断し、それに合わせた規模にしていく方針だということを意味しているともいえます。
列車密度が高く、とにかく沢山の列車が走っていた複々線化完成後のダイヤは、保有車両数の削減と合わせて過去のものとなるのでしょう。

ある程度までは、今後輸送需要が回復してくるとは思われますが、元通りになることはなく、最終的にはさらに減少傾向となっていくのは間違いありません。
小田急には複々線という余裕のあるインフラがあり、それを活かした利便性の高いダイヤを設定すれば、快適な移動を提供することが可能となるため、そのような方向で沿線価値を高めていくことになるのでしょう。

おわりに

減便や保有車両数の削減というネガティブな面に視線が向きがちですが、先のことを考えての判断もされていそうなことが、徐々に見えてきました。
余裕のあるインフラをどう小田急が活かしていくのか、個人的にはピンチをチャンスに変える未来を楽しみにしています。