ほとんどの各駅停車の終点である本厚木の隣にあり、主要駅に挟まれた状態となっている小田急の愛甲石田。
地名のようでもあり、名前のようでもあり、小田急の中では比較的珍しいタイプの駅名です。

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小田原線の開業と同時に設置された愛甲石田は、なぜこのような駅名となったのでしょうか。

列車の本数が減る区間で最初の駅

神奈川県厚木市を所在地とし、停車するのは急行や快速急行ばかりという区間、その玄関口となっているのが愛甲石田駅です。
これはほとんどの各駅停車が本厚木までの運転となっているためで、日中は優等列車しか停車しない駅となっていますが、新松田までは実質的に各駅停車として走ることとなります。

昔はホームの長さが短く、6両までしか停車することができませんでしたが、全線の10両化に合わせてホームが延長されたことで、現在は10両も停車ができるようになりました。
近年は停車するほとんどの列車が10両となっていましたが、2022年3月12日のダイヤ変更以降は急行が6両となったため、少し時代が逆戻りした印象を受けます。

主要駅である本厚木と伊勢原に挟まれているものの、利用者が比較的多い駅となっており、多くのバス路線も設定されています。
1日の平均乗降人員は伊勢原とほぼ同じで、小田急の駅全体で見た場合、2020年度の実績では23位となっています。

愛甲石田の駅名の由来

本厚木より先にある駅としては、比較的利用者が多い愛甲石田ですが、気になるのは駅名の由来です。
このような駅名となった理由には、設置された場所が関係しています。
愛甲石田は厚木市と伊勢原市の境にありますが、これがヒントになります。

つまり、駅名は厚木市側と伊勢原市側の地名が合わせられたもので、開業した当時の南毛利村愛甲と、成瀬村石田を合わせた、愛甲石田とされました。
このようなケースは他にもあり、白金高輪や小竹向原等が代表的なケースですが、愛甲石田の場合は駅の位置が決まるまでの経緯がやや複雑です。

小田急が開業する前、駅を設置する予定の場所は現在地よりも1kmほど小田原寄り、つまり石田側でした。
しかし、地主による反対があり予定地を変更したところ、今度は愛甲側の地主から駅を誘致する運動がありました。
さらに新宿寄りに駅の位置を変更し、愛甲側に駅が設置されそうになったところで、今度は石田側がそれは困ると声をあげ、最終的に愛甲と石田の境目となる現在地に落ち着いたのです。

こうして駅の位置は二つの村の境目付近となり、地名を合わせた駅名が誕生しました。

おわりに

何度も予定地を変更し、最終的には村同士の境目に落ち着いた愛甲石田。
最後は仲良く二つの地名を駅名としたあたりが、少々面白い部分ですね。