列車や形式によって異なるものの、駅への到着や出発時にミュージックホーンを鳴らしている小田急のロマンスカー。
駅の構内に響く音色は、ロマンスカーの存在感をより一層際立たせています。

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先日定期運用から引退した50000形(VSE)、マルチな活躍をする60000形(MSE)、最新の70000形(GSE)にも搭載されているミュージックホーンですが、そのルーツはどうなっているのでしょうか。

SEにはじめて搭載された補助警報装置

現在はミュージックホーンと呼ばれていますが、そのルーツは補助警報装置と呼ばれるものでした。
補助警報装置がはじめて搭載されたのは3000形(SE)で、今のように駅で鳴らすものではなく、走行中に列車の接近を知らせるための装置となっており、用途は現在と異なっていました。

3000形が登場したのは1957年のことであり、60年以上も前にそのルーツが存在しているのです。
音色は現在のものと異なりますが、基本的なメロディーは同一で、現在まで脈々と受け継がれてきたことになります。

音楽を鳴らしながら走行したことから、当時のロマンスカーはオルゴール電車とも呼ばれ、利用者に親しまれていました。
当初の補助警報はビブラフォンの音色で、同じメロディーの繰り返し音をエンドレステープで再生するというものでした。
しかし、このテープが走行中に切れたり伸びるといったトラブルがあったため、3100形(NSE)からはトランジスタを用いたものへと変わっています。

補助警報装置は20000形(RSE)まで採用が続けられましたが、昭和の終わり頃には騒音として問題視されるようになったため、10000形(HiSE)や20000形が鳴らしたケースは多くありません。
各形式で音色は若干異なっており、各ロマンスカーには個性が存在しましたが、ほとんど鳴らす機会がなかったのは残念なことでした。

そして、そのような状況が続いた結果、30000形(EXE)ではついに補助警報装置の搭載自体が見送られてしまいました。

VSEでのミュージックホーンとしての復活

時代が平成へと変わってからは、補助警報の音色を聞く機会はほとんどなくなっていました。
降雪時等の悪天候の際には、鳴らして走るケースがあったと記憶していますが、それ自体も珍しいことでした。

ほとんど聞くことができなくなった補助警報でしたが、車両が引退する際のさよなら運転等では盛大に鳴らされ、3000形や3100形の引退に華を添えていました。
車両が通過する際に生じるドップラー効果が印象的で、限られた期間のことながら楽しい時間でした。

車両の引退によって、徐々に補助警報自体が消えていくのかと思われましたが、それに待ったをかけたのが50000形です。
走行中に鳴らす補助警報としてではなく、駅で使用するミュージックホーンとしての復活で、用途を変更して懐かしい音色が帰ってきました。
この流れは現在まで続いており、結果的にミュージックホーンに類する装置が搭載されなかったのは、30000形のみという皮肉な結果となっています。

50000形での復活後、それまでの車両も鳴らすようになればよかったのですが、既に車両からは装置が撤去、または鳴らせないようにされていたため、50000形以降の車両限定の演出となっています。
7000形(LSE)の7003Fのみは、旧塗装化の際に補助警報装置を復活させましたが、あまり鳴らされることはなく、最終的には再度鳴らせなくなっていたようです。

こうして途切れながらも続いてきたミュージックホーンは、ロマンスカーを演出するアイテムとして、現在も利用者に親しまれています。

おわりに

登場してから60年以上の歴史を持つ、小田急ロマンスカーのミュージックホーン。
慣れ親しまれているメロディーが、当時と基本的には変わっていないのも凄いことですね。