新型コロナウイルス感染症による利用者の行動変容は、鉄道会社の経営に多大な影響を及ぼしつつあります。
各社で様々な対策が行われており、痛みを伴いつつ、収益の改善が急がれている状況です。

そんな中で鉄道ファンを騒がせたのが、西武が中期経営計画の発表において、他社の車両を譲受する可能性に触れた点で、同時にその可能性がある車両についての議論も活発化しています。
この話題に関係するとしたら、小田急の場合は廃車が進められている1000形となりますが、西武に譲渡される可能性はどれぐらいあるのでしょうか。

他社からの譲受車両に触れた西武

先日西武が発表した中期経営計画において、衝撃的な内容が盛り込まれました。
若干解釈が難しい表現ではあるものの、ストレートに解釈すれば他社からの中古車両を導入する計画があると読み取ることができます。
本件については多くのサイトで話題となっていますので、普段から親しくしていただいている鉄道プレスさんの記事をご覧いただければと思います。



苦しい経営環境の中で、できる限りの改善を進めていくという点において、かなり合理的な対応をしようとしているともいえますが、大手の鉄道会社が他社の中古車両を導入したケースというのは、ほとんど例がありません。
過去の事例としては、東急から名鉄、東京臨海高速鉄道からJR東日本といったケースがありますが、極めて珍しいといえます。

今回話題となっている西武については、まだ詳細が明らかにされておらず、騒がれていたような内容ではない可能性もありますが、どこから車両を調達するのかは気になるところです。

小田急の1000形が譲渡される可能性

西武の発表後、鉄道ファンの間では候補となる車両を議論する動きがみられますが、小田急1000形もその候補として時折話題になります。
実際問題、1000形が譲渡される可能性はどれぐらいあるのでしょうか。

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私としては、小田急の1000形が譲渡される可能性は極めて低いと考えています。
未更新車とした場合には、さらに可能性が低いと考えます。
その理由は、西武にとって1000形を導入するメリットがほぼないといえるからです。

西武が求めるサステナ車両は、無塗装の車体、VVVFインバーター制御等の条件をあげており、1000形はこの条件に当てはまります。
しかし、それ以外の部分においては、西武が導入した場合のデメリットが多く、小田急が置き換えを進めている現状が、暗にそれを示しているともいえます。

まず、主要機器の多くが交換時期となっており、そのままの状態で長期間の使用を行うことが困難な車両です。
機器を交換すればよいともいえますが、大きく手を入れるのであれば、素直に新車を入れたほうが得策ということになるため、西武の立場だと大改造は避けたいでしょう。
ブレーキ方式も電磁直通ブレーキであり、まだ西武にも同様の方式の車両が所属しているとはいえ、この時点で避けるようにも思います。

そして、ある程度1000形の廃車が進んでしまった現在、譲渡できる車両が僅かとなっています。
数本だけを導入するメリットはないでしょうから、ある程度まとまった数が必要であることを考えた場合、その点でも1000形は候補から外れてしまうのです。

西武がどのような車両を想定しているのかは不明なものの、そのままの状態でしばらくは使える車両で、メンテナンスや運用上も扱いやすい車両が候補になるものと思われます。
さらに、そのような状態の車両が他社で余剰となっていることが前提で、最小限の改造で導入したいのではないでしょうか。

小田急に限っていえば、3000形の初期車のほうが西武としてはメリットがあるでしょうが、小田急としても使えるところまで使いたいというのが本音でしょうから、これも可能性は低いと思われます。
いずれにしても、現状では小田急から西武に車両が譲渡される可能性は低いといえそうです。

おわりに

可能性の低さを論じておきながらも、譲渡されたら面白いだろうなと思う気持ちも強くあります。
しかし、中小私鉄でさえ導入しない小田急の車両を西武が欲しがるのかというと、やはり難しいといえそうですね。