地下鉄の千代田線に乗り入れるための車両として、1972年に登場した小田急の9000形。
それまでの車両とは全く異なる前面デザインを採用し、ロマンスカー以外では最も目立つ車両だった時期もありました。

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乗り入れに対応するための重装備が災いし、先輩の5000形よりも先に廃車が始まったことで、短命に終わった車両というイメージがあるようですが、実際のところはどうだったのでしょうか。

5000形よりも先に廃車された9000形

1989年に2400形が形式消滅して以降、小田急ではしばらく通勤型車両の本格的な廃車が行われませんでした。
その安定した時代に終わりを告げたのが、2000年から開始された2600形の廃車であり、続いて4000形も廃車となっていきました。

車両の置き換えは途切れることなく続き、登場順であれば次は5000形となるはずですが、続いて廃車となったのは9000形でした。
営団地下鉄(現在の東京メトロ)の千代田線に乗り入れるため、重装備の車両となってしまっていたことや、5000形には9000形よりも後輩の編成が多く在籍していたことから、先に9000形を置き換えることとなったのです。

この頃は3000形が増備されるペースが早く、9000形はあっという間に小田急線上から消えてしまい、気付いたらいなくなっていたような感覚でした。
廃車の順序が入れ替わったことや、ハイペースで置き換えられたためか、9000形は短命に終わったというようなイメージを当時は抱いたものです。

9000形は短命だったのか

1972年に登場した9000形は、2005年から廃車が開始され、登場から廃車開始までは約33年でした。
約1年程度で全編成が廃車されたため、編成単位で見ればもう少し活躍期間が短い車両もありますが、鉄道車両としてはそこまで短命とはいえないでしょう。

1989年度から1995年度にかけては、90両全車の更新工事も行われており、現場として扱いにくい車両ではあったものの長く活躍を続けました。
登場から廃車開始までの年数は、2600形が36年、4000形と5000形が37年ですが、9000形を短命と表現するほどの差ではないといえます。

9000形に短命のイメージを抱くのは、廃車の順序が入れ替わったことや、5000形で長生きをした編成があったからなのかもしれません。
また、相互直通運転の相方でもあった東京メトロの6000系が、9000形とは比較にならないほど長生きをした影響もありそうです。
いずれにしても、9000形が活躍した期間は極端に短いものではなく、短命というのは晩年の境遇から想起してしまうイメージなのでしょうね。

おわりに

9000形が現役の頃は、そこまで気になる車両ではありませんでしたが、引退してから味を知ったような気がします。
他の小田急の車両とはどこか違う、今思えば本当に興味深く面白い車両でした。