代々木上原から登戸まで、立体化された複々線区間が続くようになった小田急の小田原線。
実際には登戸から向ヶ丘遊園の上りも緩行線と急行線に分かれており、3本の線路が並ぶ状態となっています。

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上りのみが複々線化されているような状況ですが、今後下りも線増するとなった場合、それに意味はあるのでしょうか。

一駅だけの三線区間

立派な複々線区間が続く小田急ですが、登戸から向ヶ丘遊園までの一駅については、やや中途半端な三線区間となっています。
三線区間では、上りのみが緩行線と急行線に分かれており、朝ラッシュ時の対応を優先した配線とされました。

たったの一駅とはいえ、中途半端な三線区間が存在していますが、これはあくまでも暫定的なものであり、将来的には複々線とすることが想定されています。
三線となってしまったのは、川崎市による登戸土地区画整理事業が進んでおらず、小田急が複々線化をするタイミングでは複々線分の土地がなかったためです。
仕方なくという表現が適切かは分かりませんが、僅かな区間でも線路を増やすことを優先し、このような三線区間が生まれることとなりました。



長年に渡って暫定の三線となっている区間ですが、近年は区画整理に進展が見られており、土地については用意できそうな状況となってきました。
しかし、新型コロナウイルス感染症によって鉄道の利用動向は大きく変化し、将来的な人口減少も踏まえると、ここから複々線化を行うメリットがあるのかについては、判断が難しい状況となっています。

複々線化を行う意味

利用者が減り、台所事情も厳しい現状において、一駅だけの三線区間を複々線にした場合の費用対効果を考えると、相応のメリットがないように思われます。
費用対効果を考えなければ、下りが緩行線と急行線に分かれること自体はかなりのプラスであり、以下のようなメリットが考えられます。

・緩行線の列車がスムーズに向ヶ丘遊園まで先行できる。
・急行を緩行線に走らせることで、効率的に上位の種別による追い抜きができる。
・登戸と向ヶ丘遊園で二つの列車を抜く際に、先行列車が前を塞ぐことがなくなる。

基本的なメリットは、向ヶ丘遊園で待避線に入る列車がある場合において、後続列車の邪魔をしてしまうことがなくなるため、現状よりはダイヤが組みやすくなることでしょう。
両駅での待避自体は現在も可能であり、その点ではそこまで大きなメリットではないかもしれません。
幸いなことは、一駅だけの線増をする場合、その事業費は小規模なものとなりそうですから、投資をする余裕が生まれてくれば可能性はありそうです。

そして、一駅だけの複々線化だけではメリットが少ないものの、複々線区間が新百合ヶ丘までとなった場合には、運行上のメリットが格段に向上します。
結局のところ、実現性が低いと思われる新百合ヶ丘までの複々線化をセットにしなければ、効果の最大化は見込めませんが、小田急が自社で投資をしての実現は不可能に近く、その点は川崎市の本気度次第ということになりそうですね。

おわりに

中途半端な状態となっている三線区間は、そこを複々線化するだけだと、その効果は限定的なものとなります。
効果を最大化するには新百合ヶ丘までの複々線化が必要となり、利用動向が変化を始めてしまった現状においては、実現性は遠のくばかりのようにも思いますが、少しでも事態が好転することを願うばかりです。