新しい車両がメーカーから到着するよりも早く、1000形の廃車を進めている小田急。
ダイヤ変更に伴う減便により、保有車両数を60両も削減できるとされていましたが、最新の発表では80両を削減予定と書かれています。

5000形の増備は続けられているものの、置き換えの計画が変更された可能性は高く、今後どのように推移していくのでしょうか。

設備投資計画の見直しで80両を削減

小田急が60両もの車両を削減する可能性がある、それが分かったのは2022年2月9日のことでした。
同日に発表された決算のFAQにおいて、ダイヤ変更による費用削減の効果として触れられました。

この時点では削減が可能という表現でしたが、2022年4月28日に発表された中期経営計画では、より一層具体的な内容へと変化しています。
この段階では削減する両数を80両としており、いつの間にか20両も増加していますが、これはダイヤ変更で削減できる両数が60両、2023年度に削減できる両数が80両ということのようで、いつまでという基準の違いだと思われます。
2023年度は50000形(VSE)が完全に引退するタイミングでもあり、20両はこの差分なのでしょう。

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いずれにしても、2023年度が終わる頃には、ダイヤ変更の前と比較して80両を減らす計画のようで、保有車両数は1,000両前後になることが見込まれます。
ロマンスカーの1両あたりの長さが異なり、車両運用の効率も向上しているため、昔と単純には比較ができませんが、両数だけに目を向ければ平成初期と同等の水準となるようです。



中期経営計画で触れていることから、短期的に大きな変更が発生することは考えにくく、今後も余っている車両が廃車となる可能性が高いといえるでしょう。
そして、減便が行われた現在のダイヤを以前の状態に戻す可能性も低く、大枠は現行のダイヤを維持していくことになるものと思われます。

置き換えの計画は変更されたのか

80両もの車両を削減するとなると、車両を置き換える計画も随分変わったと考えてしまいますが、実際のところはどうなのでしょうか。
注意しなければいけないのは、保有車両数を減らすということであり、新しい車両を導入しないとは書かれていない点です。
つまり、置き換えの計画を大きく変更した可能性は高いものの、車両の増備を長期に渡って中止するのかというと、そうではないように思われます。

長い間通勤型車両の置き換えを行っていなかった小田急では、それなりに古い車両が多く在籍している状況となっています。
一時的に増備を中断する可能性はあるものの、長期に渡って新しい車両を導入しなかった場合、いつか大量に置き換える必要が生じてしまうため、問題の先送りにしかなりません。
このような状況であることを踏まえると、増備のペースは緩やかになるかもしれませんが、毎年ある程度の両数は置き換えを進めていく可能性が高いのではないでしょうか。

中期経営計画では、車両の長寿命化とライフサイクルの最適化という表現も見られます。
具体的なことは書かれていませんが、使える車両は長く使いつつ、必要以上の投資はしませんという意味のように思います。

近年の小田急では、車両に対して徹底的なリニューアルを行う傾向がありましたが、1000形のように登場から年数が経過した車両が対象になっていたこともあり、その点に対する反省がうかがえます。
2000形ではなく3000形を対象とし、更新内容の規模を縮小していることは、まさにこの点なのかもしれません。

そして、2023年度の時点で80両を削減するということは、VSEの代替新造が予定されていない可能性も高まります。
30000形(EXE)の未更新車の使用を続け、適切な時期にその2編成を置き換えるということなのでしょう。

おわりに

これから1年半ほどの間に、小田急が多くの車両を削減する可能性が高まりつつあります。
利用者数が想定を大きく上回るほどの回復をしない限りは、車両を減らすことは避けられないといえそうです。