従来の車両とは大きく異なる外見となり、良くも悪くも登場時から小田急ファンを騒がせることとなった3000形。
実用的な外見が採用された影響からか、車両に対する好き嫌いは分かれるようで、様々な意見を目にする車両でもあります。

大量に増備されることとなった3000形は、なぜ従来車と違う仕上がりの車両になったのかを考えてみたいと思います。

外見や内装が大きく変化した3000形

小田急で最大勢力となる3000形は、2002年2月10日に営業運転を開始した車両で、現在は346両が在籍しています。
製造された時期により細かい差異が多い形式ですが、実用性を重視したと感じられる角ばった車体と、コストダウンが図られたとみられる内装は基本的に共通しています。

20190504_08

小田急の車両といえば、出自が異なる1800形等の一部を除き、全体的に丸みを帯びたスマートな車体が特徴の一つでした。
車体がオールステンレスとなった1000形においても、ステンレス特有のデザイン性の悪化を最小限に食い止めようとした苦労が偲ばれます。

3000形はその流れを完全に断ち切り、前面は質素なデザインにほぼ切妻、裾絞りをやめた垂直車体とされました。
スマートな車体の象徴でもあった張り上げ屋根も不採用となり、雨樋が目立つようになっています。

車内においても変化があり、天井部の化粧板が無地の白色となったほか、余計な部材が省略されています。
座席は登場当初から硬いと評判が悪く、3000形の評価を下げる要素となってしまいました。

簡単にまとめるとこのようになりますが、全体的にコストダウンが目立つ車両というのが正直な印象で、登場当時の時代背景が色濃く反映された車両となっています。

苦しい状況下で大量増備された3000形

3000形が登場した当時の日本は、長引く不況に苦しめられていた時期であり、小田急自体も複々線化事業への投資が続いている状況でした。
そのような中で、高度経済成長期に製造された車両が置き換えの時期を迎えつつあり、それらを大量に置き換える必要がありました。

3000形はそのような背景から生まれた車両で、JR東日本の209系のようにコストダウンが図られたように見えますが、実際にはそこまで安くなかったという実態も耳にします。
コストの実態はよく分からない部分ではあるものの、コストダウンばかりが追及されたのではなく、確かにお金をかけていると思われる部分もあるのです。

登場当時から力を入れたと感じられたのは、従来とは異なる車両の走行性能でした。
地下鉄への乗り入れを行わないのにもかかわらず、起動加速度は1000形等と同等とされ、中高速域についても従来車より性能がアップしているように感じます。

それ以外にも、従来車との併結を可能にするブレーキ読み替え装置を搭載する等、機器についてはあまりコストダウンの影響を受けていない印象があります。
車内についても、扉の内側には化粧板が貼られている等、目立つ部分のコストダウンは避けられているように感じます。

大量に車両を置き換えなければいけない中で、従来車との併結といった運用面での柔軟性を持たせつつ、性能アップを行わなければいけなかったことが、車両自体の仕上がりに影響したのだと考えています。
つまり、使えるお金がある程度決まっている中で、どこを犠牲にして削るのかとなった時に、選ばれたのが車体のデザインや座席の質だったのだと思われます。
個人の好みを別にした一般論であれば、デザイン性が劣っていることや、座席の質がいまいちなのは登場前から分かることであり、それでも選択されているということなのです。

どこに力を入れて設計するか、それが色濃く反映されて3000形という車両が生まれたのでしょう。
限られた条件の中でどのようにしていくかを考え抜いた、当時の関係者の苦労を感じずにはいられませんでした。

おわりに

メリハリのある設計が行われた3000形でしたが、その後の車両では改善された部分もあり、反省点は次世代の車両に活かされることとなりました。
最新型の5000形を見ていると、様々な部分で改善が進められたことを実感し、乗っていて嬉しく感じてしまいます。