神奈川県内にある多摩線の途中駅で、唯一優等列車が停車する栗平。
周辺の駅と比べて利用者が多く、小田急全体では平均の乗降人員で44位に位置しています。

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そんな栗平には、将来的に待避線を設置することを考慮した土地が用意されていました。
結果的に待避線が設置されることはありませんでしたが、どのような使い方を想定していたのでしょうか。

待避線の設置が考慮されていた栗平駅

新百合ヶ丘から二駅目に位置する栗平は、相対式のホームとなっています。
しかし、その割には駅構内の土地が広く取られており、五月台や黒川とは少し雰囲気が違うのが栗平の特徴です。

栗平の土地が広く取られているのは、将来的に待避線を設置することを考慮していたためで、橋上駅舎や道路橋もそれを考慮して建設されています。
エレベーターの設置や、南口の改札が増設されたことで、待避線を設けることは難しくなってしまいましたが、広い敷地にその名残が現在もある状態です。

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上りホーム側には、敷地内の使っていない場所にオブジェが設けられており、ちょっとしたアクセントになっています。
このようなものは小田急線内でも珍しく、広い敷地がある栗平ならではのものといえそうです。

待避線が設置された場合の使い道

待避線の設置が考慮されていた栗平ですが、新百合ヶ丘から僅かに二駅という立地であり、どのように使うことを想定していたのでしょうか。
現在は撤去されてしまいましたが、小田急多摩センターも待避線を設ける駅であり、やや過剰な印象を受けます。

どのような使い道が想定されていたのかを推測するのにあたって、当時の鉄道ピクトリアルを読み返してみると、分割併合が考えられているとの記述がありました。
その他には、高速走行の前提や地下鉄との直通運転、特急の運転は行わないといったことが書かれていますが、分割併合がやはり気になる部分といえます。

現在は快速急行までもが停車する栗平ですが、当時の時点で優等列車の停車を想定していたのかといえば、少々怪しい気がしています。
そうなると、待避線は緩急接続ではなく通過待ちのためということになりますが、新百合ヶ丘から二駅の位置で通過待ちをするのかというと、あまり意味がないようにも感じられます。
多摩線内の折り返し列車を栗平で待避させ、小田原線との直通列車を新百合ヶ丘で多摩線ホームに入れる想定をしていたのかもしれません。

分割併合の想定についても気になる点があり、そもそも目的は何だったのでしょうか。
栗平で分割併合をするとは思えないので、想定駅は新百合ヶ丘だったのでしょうが、小田原線と多摩線方面に分離するのか、それとも両方を多摩線に走らせて種別を変えるのか、色々なパターンが考えられます。
使われることがなかった快速という種別が、どのような使い道を想定していたのかも気になる部分でしょう。

もう一つ考えられることとして、ラッシュ時のみの使用も想定されます。
列車の本数が過密になる時間帯のみ、栗平で追い抜きをすることが考えられていたのかもしれません。
ダイヤが乱れた際に列車の順序を入れ替えることも可能となり、柔軟な運用を可能にするような位置付けだった可能性もありそうです。

考えれば考えるほどよく分からなくなりますが、立地の関係で必須とはいえない待避線ですから、補助的な役割を想定していたのかもしれませんね。

おわりに

公表されている情報が少なく、何を想定していたのかよく分からない栗平の待避線。
開業時に多摩線はどのような将来を描いていたのか、壮大な多摩ニュータウンの計画があってのことですから、色々と興味深い部分です。