1978年に小田急と営団地下鉄(現在の東京メトロ)の千代田線との間で始まった相互直通運転は、2016年にJR東日本の常磐緩行線を加えた3社での取り組みに発展しました。
千代田線と常磐緩行線の相互直通運転は、小田急よりも早い1971年に開始されており、長い年月を経ての変化となりました。

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3社での相互直通運転にはなったものの、千代田線と常磐緩行線が活発な乗り入れを行っているのに対し、小田急は本数が控えめとなっていますが、この差はなぜ生じているのでしょうか。

結び付きが強い千代田線と常磐緩行線

小田急、東京メトロ、JR東日本の3社は、お互いの車両が他社の路線を走る乗り入れを行っています。
以前は東京メトロの車両だけが3社を通して運転していましたが、2016年からは小田急とJR東日本の車両もお互いの路線に乗り入れるようになり、運用の柔軟性が高まりました。

現在乗り入れを行っている車両は、小田急が4000形、東京メトロが16000系、JR東日本はE233系2000番台で、小田急とJR東日本の車両は兄弟形式に近い関係です。
どの車両にも各社の特徴が表れており、そういった面が楽しめるのも相互直通運転の醍醐味といえます。

先に相互直通運転を始めた千代田線と常磐緩行線は、綾瀬を境に車両の行き来を行っています。
多くの列車が乗り入れを行っていることが特徴で、千代田線からは半数ほどの列車が、常磐緩行線からはほとんどの列車が相手方の路線に乗り入れています。
千代田線と常磐緩行線では列車の密度が異なり、千代田線の列車には綾瀬で折り返す列車があるものの、それ以外は一体化した運行が行われており、相互直通運転のメリットが最大限活かされています。

対する小田急と千代田線については、代々木上原を境に車両の行き来を行います。
乗り入れを行う列車はそこまで多くなく、日中は1時間に3本程度、ラッシュ時には千代田線の半数ほどの列車が直通運転を行っています。
昔に比べれば本数は増えましたが、ラッシュ時以外はそれほど活発ではなく、千代田線と常磐緩行線の関係とは対照的といえるでしょう。

乗り入れの本数を増やすのが難しい小田急

代々木上原での乗客の動きを見ていると、もう少し乗り入れる本数を増やしてもよさそうに見えますが、なぜこの程度に抑えられているのでしょうか。
千代田線と常磐緩行線の関係と比較すると、少々もったいないようにも感じられます。

小田急と千代田線の乗り入れ本数が少ない理由としては、代々木上原が途中駅であることが関係しています。
千代田線にとっての代々木上原は起終点駅ですが、小田急にとっての起終点駅は新宿であり、あくまでも代々木上原は途中駅でしかありません。
新宿に向かう利用者も多いため、どうしても千代田線との乗り入れを中心にしたダイヤは組みにくいという事情があります。

複々線区間が代々木上原を境として始まるため、千代田線は実質的に複々線の延長区間のような扱いとなっており、列車もそのような走り方をしています。
もう少し本数が増やせそうにも思われますが、起終点である新宿の本数を確保する必要がある小田急には、それがなかなかできない苦しい事情があります。

相互直通運転では、各社の車両が走行する距離の合計を揃えることで、車両の使用料を相殺しています。
これが小田急にとっては苦しい部分で、千代田線の代々木上原から綾瀬までが21.9km、常磐緩行線の綾瀬から我孫子までが23.6kmなのに対して、代々木上原から伊勢原まで走った場合には48.7kmもあるのです。

一部の列車が長い距離を走るものの、多くが成城学園前や向ヶ丘遊園で折り返しているのにはこれが関係しており、本数を増やすほど短距離で折り返しせざるを得なくなります。
ダイヤが乱れた際の対応を無視すれば、乗り入れる列車がある程度の距離を走ったほうが小田急の場合は都合がよいものの、走行距離を相殺する関係で簡単ではありません。

乗り入れ先の路線で、小田急の車両が折り返し運転をして調整することも可能ですが、ダイヤを組む際の制約が多くなってしまうため、3社での相互直通運転を行うメリットが薄くなってしまいます。
本数を増やしたい、もう少し長い距離を走らせたいと思っても、日中は直通運転に対する需要も限定的で、なかなかそうはできないのが小田急の苦しいところですね。

おわりに

様々な事情により、ラッシュ時以外は控えめとなっている小田急と他社との相互直通運転。
もう少し本数や列車種別のパターンが増えると使いやすくなるものの、それを実現するのはなかなか難しいのかもしれませんね。