リニューアルの順番が後ろだった4両に廃車が発生し、今後は数を減らす可能性が高まってきた小田急の8000形。
VVVFインバーター制御に改造された車両の中で、先陣を切って廃車された8056Fは、リニューアルから約13年しか経過しておらず、ややもったいなく感じる面もあります。

まだ走れそうに見える8000形を廃車するのはもったいない判断なのか、今回はその点を考えてみたいと思います。

まだまだ走れそうに見える8000形

車体がステンレスではなく、ケイプアイボリーにロイヤルブルーの帯を巻いている8000形は、1982年に最初の編成が製造されました。
1987年までに160両が製造され、小田急の主力として活躍を続けてきましたが、一部の編成が廃車になったことで、勢力の縮小が始まりつつあります。

今も現役で活躍する8000形を見ると、登場から40年が経とうとしている車両にはとても見えませんが、これは徹底的なリニューアルが行われたことに起因します。
登場から20年ほどが経過した2002年度より、各編成のリニューアルが行われたことで、一部の編成を除いて足回りも3000形や4000形と同等になっており、今も最前線で活躍することが可能となっています。
車体についても修繕が行われており、見た目の面でも綺麗な編成が揃っています。

リニューアルの内容が多岐に渡ったこともあり、全編成の更新には年数を要しており、最後の編成は2013年度の施工となっています。
このような経緯により、4両を中心にリニューアルから日が浅い編成があり、廃車するのはもったいないと感じるのは普通の感覚なのかもしれません。

8000形の廃車はもったいないのか

2013年度までリニューアルを続けながらも、2020年度には早くも8000形の廃車が始まりました。
踏切事故で損傷した8264Fや、界磁チョッパ制御のままだった編成が先に廃車となりましたが、最近では他の編成にも廃車が発生し、まだまだ使えそうな車両の引退が始まりつつあります。

鉄道ファンの心情としては、まだまだ走れそうに見える8000形の廃車はもったいなく感じますが、実際のところはどうなのでしょうか。
8000形がどの程度老朽化しているのか、それを外部から知ることはできませんが、故障が頻発するようなレベルではないことだけは確かです。

2022年3月12日に行われたダイヤ変更において、小田急では大胆な減便を行いました。
この減便により保有する車両数の削減が可能とされており、車両のメンテナンス等に要するコストを減らすことで、収益性の改善が進められています。

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さて、リニューアルからの年数が浅い8000形を廃車にすること、これはもったいないことなのでしょうか。
感情論としては間違いなくもったいないのですが、経営の観点でいえば、使わない車両を残すほうが、お金の使い道としてもったいないということになります。
当面は増発をしないことが確定している場合、過剰な車両を保有することはコスト増となるだけで、経営的なメリットは基本的にありません。

リニューアルをしてから日が浅いという考え方は、サンクコスト効果でしかないため、増発する時には役に立つという理由で残すのは得策ではないのです。
徹底的なリニューアルを行った時と今では状況が異なり、既に使ってしまった費用を回収することはできないため、現状を見ての判断が行われているといえるでしょう。
現時点での最適解が8000形の廃車ということになりますが、その判断が吉と出るか凶と出るのかは、何年も先になって分かることなのかもしれませんね。

おわりに

一人の鉄道ファンとして考えれば、8000形の廃車はもったいないと感じます。
しかし、一人の社会人として考えれば、8000形の廃車は経営の観点で当然の判断であり、そのような時期になったという事実を受け止めるしかなく、複雑な気持ちであるというのが正直なところです。