通勤や通学用の車両からロマンスカーまで、多種多様な形式が活躍する小田急線。
近年は見た目のバリエーションが豊富となりましたが、多くの車両に共通することとして、走行音が静かであるという点があげられます。

20190406_03

新しい車両ほど低騒音化が進んでおり、それは小田急に限ったことでもありませんが、なぜ静かな車両が小田急には多いのでしょうか。

小田急における車両の低騒音化

小田急で最大勢力となった3000形の増備過程において、衝撃的な試験車両が2003年に登場しました。
床下全体にカバーを設置し、台車や機器類の全てを覆い隠した姿となっており、防音性を高めることを目的としたものでした。

20200412_05

3000形以前の車両においても、コンプレッサーや車輪等の低騒音化が進められていましたが、床下全体を物理的に隠すという発想には衝撃を受けました。
この仕様とされた3263Fは試験車両でしたが、その後の3000形は前面のスカートを変更しており、他の車両にも採用する想定があったとみられます。

しかし、試験車両の登場後には全密閉式のモーターを採用する方向に舵が切られ、床下のカバーには保守や緊急時の対応に難があると判断されたのか、試験のみで終わることとなりました。
全密閉式のモーターは、内部の発熱を抑えることで冷却のための通風口をなくし、騒音が外に漏れにくいようにしたもので、小田急では4000形から本格的に採用されました。
その後の新型車両や更新時にも積極的に採用され、現在は所属する車両の半分以上がこのタイプのモーターとなっています。

早期に進められた車両の低騒音化

早くから低騒音化に力を入れていた小田急ですが、その背景には高架複々線化に絡む訴訟が関係していたとみられます。
3263Fが登場したのは訴訟中の頃であり、その後騒音を抑制すること等を条件とした和解が成立したこともあってか、小田急は積極的に車両の低騒音化を進めていきます。

前述のとおり、4000形から本格的に全密閉式のモーターを採用しますが、初採用は50000形(VSE)で、3000形も追加の増備時に不足するモーターについては、全密閉式を採用しました。
8000形もリニューアルの途中からは全密閉式のモーターとなり、1000形や30000形(EXEα)についても同様です。

置き換えとリニューアルで低騒音化は一気に進み、コンプレッサー等がうるさかった古い車両も一掃されたことで、小田急には静かな車両ばかりが走るようになりました。
最近では1000形の未更新車が引退しており、低騒音化はさらに一歩前進しています。

おわりに

ロングレール化が進んだ小田急では、滑るように車両が通過する区間も多くなりました。
電車に乗っていてもかなり静かで、鉄道ファンとしては少し物足りないぐらい、低騒音化が進んだことを実感します。