全線に229ヶ所の踏切があり、終日に渡って電車が行き交っている小田急線。
現在は全ての踏切に警報機と遮断機が設置されており、設備面の対策を強化することで安全性の向上が図られています。

そんな小田急において、車両が踏切を通過する際に警笛を鳴らすことがあります。
警報機や遮断機があれば警笛を鳴らす必要はないように思われますが、なぜそのような対応が行われているのでしょうか。

踏切を通過する際に鳴らされる警笛

長編成化が進んだことで、先頭車に乗る機会は以前よりも少なくなりました。
先頭車ならではの楽しみといえば、最前部の特権である前面展望ですが、前を見ていると踏切を通過する際に警笛を鳴らすケースがあることに気付きます。

電車が警笛を鳴らすタイミングといえば、ホーム上の危ない位置を利用者が歩いている場合等が多いですが、宅地化の進行により騒音問題にもなってしまうため、都市部では必要以上に鳴らさなくなりました。
踏切の通過時に鳴らす警笛についても、やわらかめな音を出す電子警笛を使用する場合がほとんどで、鳴らすシーンも限られています。

踏切で警笛を鳴らす理由

必要以上には鳴らさなくなった警笛ですが、踏切で鳴らすのはどういった場合なのでしょうか。
踏切内に人や自動車がいれば当然鳴らさなければいけませんが、そのようなケースは稀といえるでしょう。

警笛を鳴らすのはどのような場合なのか、注意して見ていると特定のケースに限られることに気付きます。
それは対向列車とすれ違う際であり、ほとんどがこれに該当します。
すれ違いといえば、最近は少なくなってしまったものの、バスの運転手が手をあげて挨拶をする光景がありましたが、そういったものなのでしょうか。

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当然のことながら、電車の場合は挨拶ではなく、すれ違いで鳴らす場合も上の写真に見られるこのようなパターンに限られます。
対向列車が踏切を抜けた直後で、かつこれから踏切を通過しようとしている場合なのです。
ケースバイケースではありますが、既に踏切を通過しつつある場合や、対向列車がもっと早く通過した場合には鳴らしません。

このような場合に警笛を鳴らすのは、対向列車の通過後に遮断機をくぐって急いで渡ろうとする人に車両の存在を気付かせることを目的としており、事故防止のために行われています。
先ほどの写真のケースでは、60000形(MSE)が通過した直後に左側から歩行者が飛び出し、2000形と衝突するケースが想定され、それを防止するために2000形が警笛を鳴らすのです。

こういったすれ違いの際に警笛を鳴らすのは他社でも行われており、小田急に限ったものではありません。
小田急の場合にはかなり徹底されており、鳴らさないことのほうが珍しいようにも思います。

おわりに

安全を第一に考え、様々な事故防止対策が行われている鉄道の踏切。
どうしても事故が多くなる場所ですが、根本的な対策は立体化する以外にはなく、鉄道会社にとっては頭の痛い問題となっています。