鉄道ファンや子供の特等席といえば、先頭車の最前部にある乗務員室の後ろではないでしょうか。
この場所で乗客がかぶりつきをして前を眺めながら移動するのは、今も昔も変わらない車内の光景となっています。

そんな特等席がある乗務員室との仕切部分ですが、小田急には伝統となっている構造があります。
今も続くその伝統は、いったいどのようなものなのでしょうか。

前面展望に配慮した特等席

小田急の車両には、乗務員室との仕切に設置されている窓が大きいという特徴があります。
窓の数自体も多く、運転席側から助手席側まで、可能な限りの窓を設置するというのが伝統となっています。

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写真は3000形の乗務員室との仕切で、3枚の窓から前面展望を楽しむことができます。
窓の大きさや数だけではなく、位置が比較的低くなっていることも特徴の一つで、身長が低い子供でも前が見やすくなっています。
近年は位置が若干高くなってしまったものの、他社ではもっと高い位置とされるケースもある中、小田急は必要以上には高くしないようにしているようです。

さらに、窓の部分には手すりが設けられており、子供がつかまることが可能なほか、大人は腕を置いて楽な姿勢でかぶりつきを楽しむことができます。
トンネルの通過時や夜間を除き、カーテンは全て開けられているのが標準で、前面展望を楽しませつつ、見せる運転をするというスタイルが今日まで続けられてきました。

仕切の窓が少ない車両

伝統的に仕切の窓が多い小田急の車両ですが、一部には例外も存在します。
窓の少なさが際立っていたのは9000形で、千代田線に乗り入れるためのATCを搭載する関係上、乗務員扉以外には窓がなく、異質な存在となっていました。

その他には、運転席側の窓だけがないというケースが比較的見られます。
2200系列等にそのような車両があったほか、千代田線に乗り入れる役目を9000形から譲り受けた1000形についても同様で、2000形にもその流れが続きました。
近年の増備車両である4000形や5000形についても、運転席の後ろには窓がない状態となっていますが、踏切事故等の際に運転士の救出を容易にすることや、避難用のはしごが備えられているためのようです。

機器を追加で設置するため、窓の下部を隠したケースや、窓自体を少し高く改造した車両もありますが、基本的にはできるだけ見やすい状態は維持されています。
最新の5000形でもこの伝統は続いており、前面展望を楽しみたい人にとっては嬉しい構造となっています。

おわりに

千代田線の6000系が来ると、前が見えなくてがっかりしたものです。
9000形についても同様でしたが、だいたい埋まっている乗務員扉の後ろが運よく空いていると、自分だけが前面展望を楽しめるという特権が得られました。