複々線区間を高架や地下で走ってきた小田急は、登戸を出ると線路が地上に降りていきます。
近代的な姿の駅ばかりを通過してきた状況は一変し、昔ながらの私鉄駅といった佇まいの向ヶ丘遊園に到着することとなります。

改築や増築を繰り返したことがうかがえる向ヶ丘遊園には、南北にレトロな外観の駅舎がありますが、その正体はどのようなものなのでしょうか。

開業時から残る北口の駅舎

橋上駅舎化がされておらず、地上にある駅舎から跨線橋を渡ってホームに出入りする向ヶ丘遊園には、南口と北口があります。
駅舎は南北の両方にありますが、北口では開業時に建てられたものが今も現役で、手直しをしつつ使われています。

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駅舎はこのような牧舎スタイルとなっており、開業当時から基本的な部分は変わっていません。
開業当時の小田急は、単行の電車が走るような路線でしたが、このような立派な駅舎を建てていたのです。

このような駅舎は、向ヶ丘遊園、町田、本厚木、秦野、新松田の5駅で見られ、圧倒的な存在感を誇りました。
しかし、本厚木、町田、秦野、新松田の順に姿を消し、向ヶ丘遊園にだけ今も残っています。

屋根に特徴がある建築物ですが、これはギャンブレル屋根と呼ばれるもののようで、二段の勾配があります。
マンサード屋根と混同されることが多いようですが、切妻になっているものはギャンブレル屋根という呼び方が正式なようです。
2019年度に元々の特徴を残したままリニューアルが行われており、当面はこの姿を維持してくれるものと思われます。

リニューアルによって誕生した南口の駅舎

開業時からの駅舎が残る北口に対して、新しいレトロスタイルとなっているのが南口です。
元々は一般的な駅舎が建っていましたが、「ナチュラル・レトロモダン」をコンセプトにリニューアルが行われ、2019年4月1日に使用を開始しました。

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北口に似た外見ではあるものの、屋根の部分はリニューアルの際に構築されたもので、レトロなデザインの駅舎へと生まれ変わりました。
雰囲気自体も北口と合わせられており、駅全体で見ても違和感のない仕上がりとなっています。

駅舎だけではなく、跨線橋等もレトロなデザインになっており、照明や塗装に特徴があります。
ホームがレトロな仕上がりになっていないのは少し残念ですが、歴史的な建造物があるという長所を活かしたリニューアルとなりました。

おわりに

南北にレトロな二つの駅舎がありながら、その生い立ちは全く異なるものでした。
駅の周辺には自然が多く残っているため、開業時からの貴重な駅舎が残る向ヶ丘遊園に、散歩がてら出かけてみてはいかがでしょうか。