小田原方に引き上げ線が設けられ、終点となる列車が多数設定されている小田急の新松田駅。
新宿方面から来る列車だけではなく、小田原方面から来る列車にも引き上げ線は使われており、駅構内で3回もの折り返しを行っています。

スマートな折り返しではなく、引き上げ線が新宿方にもあれば解決しそうな問題ですが、設置できるような場所はあるのでしょうか。

設置スペースがない新宿方

折り返し運転等に活用されている引き上げ線ですが、その歴史は意外にも浅く、ホームの長さを10両に対応するのに合わせて設置されました。
かつては小田原方に渡り線が設けられており、小田原方面から新松田行きとして到着した列車は上りホームに乗客を降ろし、折り返して下り線に転線して停車、本線上で再度折り返して下りホームからの始発列車となっていました。

現在の引き上げ線と同じことを本線上で行っていたことになりますが、列車密度が低かったからこそできたのかもしれません。
昔は新松田での折り返しといえば小田原方面からの列車であり、引き上げ線の設置により本線上での折り返しという問題は解決しました。

引き上げ線の設置に関する疑問があるとすれば、なぜ新宿方に設けなかったのかということですが、JR東海の御殿場線が小田急の上を通っていることや、用地の余裕がないことが関係しているといえそうです。

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駅から少し離れれば、用地を確保すること自体はできそうなものの、カーブや橋梁が連続する区間となってしまい、あえてそこに造るのも得策ではなさそうです。
3回の折り返しをする運用上のデメリットはありますが、小田原方の引き上げ線を活用するというのが、設置当時から現在までに至る最適解なのでしょう。

ホームでの折り返しはできないのか

引き上げ線の問題を考えていると、ホームでの折り返しをすることはできないのか、そんな疑問が浮かんできます。
本線上での折り返しをしていた頃にもいえますが、上りホームから下り列車として出発すれば、引き上げ線の問題は解決する面もあるからです。

はっきりとした理由は定かではないものの、案内上の問題や乗り換えの利便性を考えてか、小田急は昔から逆線到着や発車を好まない傾向があり、できる限り行わないようにしてきました。
近年は昔より逆線発車が多くなっていますが、伊勢原行きとして到着した列車を回送で折り返し、本厚木から客扱いをするようなケースも多く、今も避けていること自体は変わらないようです。

新松田についても、小田原方の渡り線を活用すれば、逆線到着や発車が可能だったことになりますが、それは避けていたということになります。
各駅停車から優等列車の乗り換え時において、階段の昇り降りが必要になるのを嫌ったのでしょうが、小田急らしいエピソードといえます。

おわりに

待避線を廃止し、中線のような形態にする解決方法を考えてみましたが、新松田に待避線がなくなることのデメリットも多く、夢物語にしかなりませんでした。
藤沢のように折り返し列車が真ん中に停車していれば、どちらのホームでも乗降が可能となりますが、それ以上にデメリットのほうが大きいといえそうです。