小田急と京王の高架駅が並び、多摩ニュータウンの中心地であることを実感する多摩センター駅。
多摩モノレールも加えた3路線が乗り入れる駅となっていますが、鉄道会社によって駅名は異なり、小田急は小田急多摩センターとなっています。

高架上の広い構内が印象的な駅ですが、以前は待避線が設けられており、廃止後の現在も一部には線路が残っています。
比較的復活は容易だと思われる待避線ですが、復活させた場合に利用価値はあるのでしょうか。

待避線の設置から撤去までの経緯

京王多摩センターの開業から半年後、1975年4月23日に小田急多摩センターが開業しました。
多摩線は前年に小田急永山まで開業しており、1年ほど遅れての延伸開業となっています。

開業当初からホームの配置は現在と同じでしたが、待避線自体は設置されていませんでした。
待避線側には柵が設置されており、実質的には相対式のホームとなっていたのです。

そんな駅構内に変化があったのは1985年3月10日のことで、予め用意されていたスペースに待避線を設置し、使用を開始することとなりました。
当時はまだ多摩線の終点であり、列車の本数も多くはない状況でしたが、車両の増加による留置場所を確保することを主目的として、引き上げ線の改良と合わせて設置されたものです。

このような経緯で誕生したことから、多摩線が唐木田まで延伸してからも活用機会は多くありませんでした。
2006年には使用自体が中止されてしまい、後に一部の線路やポイントが撤去されています。

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現在も一部の線路は残っていますが、錆びた状態が使われていないことを物語っています。
隣の京王は待避線に車両が入ってくるところであり、路線の長さの違いを感じる印象的なシーンとなりました。

待避線を復活させた場合の利用価値

ない状態で開業し、設置された後に撤去された待避線ですが、将来的には復活の可能性が残されています。
多摩線には延伸の可能性がまだ残っており、現状は相模原に繋げることを検討しているためです。

事業化はされておらず、可能性はまだ高くないといえますが、仮に延伸が実現した場合には待避線を復活させることになるでしょう。
リニア中央新幹線の駅が設置される橋本まで繋がれば、小田急にとっても多摩線を延伸する価値はありそうですが、京王との重複が発生してしまうことから、難しいといえます。

唐木田が終点である以上、小田急多摩センターの待避線を復活させる理由はなさそうですが、一つ考えられるのが朝のラッシュ時における活用です。
平日に運転される通勤急行は、着席の機会を提供するため、多くが小田急多摩センターを始発駅としています。
待避線があれば、発車を待つ通勤急行に唐木田から来た各駅停車を接続させることができるため、唐木田からの乗客の利便性を高めることができます。

待避線を廃止せずに残していれば、そもそもこのような運用をしたと予想されますが、2006年の段階でこんな展開になるとは予想できなかったのでしょう。
新百合ヶ丘で多摩線の乗客が快速急行に流れることも減らせるため、そういった面でのメリットも期待できますが、これだけのために復活をさせるのかといえば、少し難しいかもしれませんね。

おわりに

高架上に待避線用のスペースがあり、ややもったいない印象の小田急多摩センター駅。
結果的に路線が短くなっていることが悔やまれますが、再び活用される時は訪れるのでしょうか。