小田急で行く温泉といえば、小田原から箱根登山線を使っての箱根が有名です。
グループ各社で連携して箱根を盛り上げていますが、小田急線内にも小規模な温泉郷があります。

温泉郷は駅名でも示され、本厚木の少し先にある鶴巻温泉という駅ですが、過去に3回もの駅名変更を行っています。
鶴巻温泉駅は、なぜ3回も駅名変更を行ったのでしょうか。

住宅地の中にある小さな温泉郷

神奈川県秦野市の端にある鶴巻温泉は、小田急の起点である新宿から56kmほどのところにある温泉郷です。
温泉郷のすぐそばには小田急の鶴巻温泉駅があり、交通の便がとてもよく、気軽に行ける温泉といえるでしょう。

鶴巻温泉駅にロマンスカーは停車しませんが、新宿から快速急行で1時間程度で行くことができるため、日帰りでの気軽な利用も可能です。
鶴巻温泉の周辺は住宅街としても発展していますが、秦野市は自然が豊富な地域となっており、それらと組み合わせての観光も楽しめます。
日帰りでの利用が可能な施設をはじめ、旅館等の宿泊施設もあるため、様々な楽しみ方ができる温泉郷となっています。

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泉質に目を向けると、牛乳並にカルシウムイオンが含まれている日本有数の温泉で、駅に近いというだけではないことにも注目です。
このように立派な温泉地であり、駅名にもすることで知名度の向上が図られていますが、過去には3回も駅名を改称したという歴史が隠れています。

駅名に温泉を付けて外した悲しい歴史

鶴巻温泉駅は1927年4月1日に設置され、小田急が開業した当時から存在します。
温泉自体は既にあったものの、開業当時の駅名は鶴巻となっており、温泉を示すものではありませんでした。

鶴巻駅に対しては、当然のことながら早期に駅名の改称が要望され、1930年3月15日には早くも現在の駅名である鶴巻温泉へと改称されます。
しかし、駅名に温泉を加えて売り出していく中、当時の世界はそのまま平穏に過ぎていくことを許しませんでした。

駅名の改称から10年ほどが経過し、日本は太平洋戦争へと突入していきました。
戦時中に温泉はふさわしくないという判断により、1944年10月20日に駅名は再び鶴巻へと改称されます。

温泉郷を売り出していこうと駅名を変えたにもかかわらず、世の中の事情により元の駅名に戻されるという、悲しくも珍しい展開となったのです。
駅名が再び鶴巻温泉となったのは1958年4月1日で、終戦から10年以上が経ってからのことでした。

おわりに

温泉を駅名に付けたり外したり、改称を繰り返すこととなった鶴巻温泉駅。
鶴巻温泉という駅名は、その地に温泉郷があることを示すだけではなく、世の中が平和という象徴でもあるのかもしれませんね。