現代の鉄道車両では当たり前の装備品となり、省エネルギー化にも貢献している電気ブレーキ。
小田急においては、1954年に登場した2200形が発電制動を常用するようになり、本格的な電気ブレーキの時代が始まりました。

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進化しつつ現在まで続く電気ブレーキの歴史を、今回は振り返ってみたいと思います。

発電制動が主役だった時代

電車を走行させるモーターを発電機としても利用し、2200形は電気ブレーキを常用するようになりました。
2200形で用いられたのは発電制動と呼ばれるもので、ブレーキを使用する際に発生する電力については、抵抗器を利用して捨てられます。

発電制動を利用することで、ブレーキシューの摩耗を抑えられるといったメリットがあり、小田急では2300形、2220形、2320形と採用が続き、大量生産形式となる2400形でも用いられました。
2400形の床下には抵抗器がずらりと並んでいましたが、高速からのブレーキ時には発熱量が凄まじく、夏の停車中は相当な暑さだったようです。

続いて登場した2600形と4000形は発電制動を採用せず、2400形の実質的な後継形式となった5000形が次の採用例でした。
5000形に続いて登場した9000形についても発電制動を採用しますが、合わせて回生制動も使える車両となりました。
ブレーキをかけ始める際の速度によって、高速域では安定性のある発電制動を、地下鉄線内を中心とした低速域では回生制動が使われ、発熱量の削減に寄与することとなります。

ロマンスカーについては、2300形以降の車両で発電制動が用いられますが、通勤型車両よりも長く採用が続きます。
1990年に登場した20000形(RSE)まで採用が続きますが、停車する頻度が少ない特急型車両においては、回生制動を使用するメリットが少なかったためでしょう。

省エネルギー化に貢献する回生制動

発電制動が主役の時代、小田急では回生制動を用いた変わり種の車両が登場しました。
回生制動は、ブレーキを使用した際に発生する電力を架線に戻し、他の車両がその電力を走行するために使用するもので、1964年に登場した2600形が小田急で初めての採用例となっています。

省エネルギー化を目的として、後年に主役となる回生制動ですが、2600形は朝のラッシュ時に必要となる電力を抑えることを目的としていました。
安定性には課題があり、運転には色々な苦労があったようです。
小田急で次に回生制動が採用されたのは、前述のとおり9000形ですが、こちらも省エネルギー化というよりは温度上昇の抑制が目的であり、現代とは少し事情が異なっていたといえます。

小田急が本格的な回生制動の時代へと突入するのは、1982年に登場した8000形がきっかけでした。
オイルショックを契機に省エネが叫ばれるようになり、技術の進歩等も追い風となったことで、通勤型車両は本格的な回生制動の時代となっていきます。
8000形以降に登場する通勤型車両は全て回生制動を採用しており、3000形からは停止まで電気ブレーキを使用する純電気ブレーキへと発展しました。

一方で、ロマンスカーにおける回生制動の採用は遅く、1996年に登場した30000形(EXE)が最初の搭載車両となりました。
それ以降はロマンスカーも回生制動が標準となり、小田急における発電制動は過去のものとなっていきました。

おわりに

7000形(LSE)が引退したことで、小田急の車両は回生制動に統一されました。
限りある資源を有効活用するためにも、回生制動が果たす役割は大きいといえそうですね。