2022年3月11日に定期運行を終了し、現在は臨時列車等で活躍を続ける小田急の50000形(VSE)。
完全に引退する予定の時期まで1年を切りましたが、まだ実感がわかないというのが正直なところかもしれません。

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そんなVSEといえば、他の車両にはないプレミアムなサービスが提供された歴史があります。
定期運行の終了を待たずに終わったサービスは、なぜ続けることができなかったのでしょうか。

VSEでのみ行われたサービス

ロマンスカーブランドの復権を目指して登場したVSEは、前面展望席や連接車といった伝統の復活だけではなく、他の車両とは異なるサービスの提供も行われました。
走る喫茶室が終了し、当時のロマンスカーではワゴンサービスが提供されていましたが、VSEでのみシートサービスが復活し、他の車両とは差別化が図られています。

シートサービスで提供される飲料については、ガラス製の専用カップが用意され、プレミアムなサービスと表現できるものであったと思います。
車内にはカフェのカウンターが設けられ、お弁当等の販売も行われており、楽しい旅を盛り上げていたといえます。
その他にも、VSEにはサルーンと呼ばれるセミコンパートメントがあり、グループでの利用に最適なサービスだったほか、通常の座席も広いシートピッチとなっています。

豪華なロマンスカーという表現ができるVSEでしたが、2016年3月26日のダイヤ改正で特急の運用が変わり、VSEに特化したサービスの維持が難しくなりました。
シートサービスは通常のワゴンサービスへと変更され、カフェのカウンターも営業を終了してしまい、設備の面以外ではプレミアムなサービスがなくなっていくこととなります。

プレミアムなサービスの復活はあるのか

臨時列車等で活躍を続けるVSEですが、完全に引退する日は着実に近付きつつあります。
近年の車両では最も豪華で、プレミアムなロマンスカーだったVSEですが、その特徴こそが車両としての寿命を縮めてしまった面は否めないでしょう。

シートサービスの終了についても、当然のことながら続けようと思えば続けること自体は可能だったと思われますが、あまりにも採算が合わなかったというのが正直なところなのかもしれません。
編成での定員が少なく、他車と異なるサービスを提供するということは、それだけでコストがかかることを意味します。

しかし、プレミアムなサービス、プレミアムな車両に需要や価値がないのかというと、そんなことはありません。
海外から訪れる富裕層の観光客等にとっても価値があるでしょうし、通常料金の範囲内で価値を提供すること、その点に無理があったのだと思うのです。

VSEが登場した当時とは時代も変わり、追加料金を払うことに対して許容できる人が増えているようにも思われるため、他車とは異なる料金体系の列車を走らせるのは検討できるのではないでしょうか。
同じ料金で豪華というのは本来無理なことであり、価値に見合った料金設定にすれば、VSEを超えるような車両を走らせることも可能かもしれません。
こんな時代だからこそ、他とは何もかもが異なるロマンスカーを登場させるのは、営業的にも価値があるように思うのです。

おわりに

VSEが登場した当時、徹底的なこだわりに小田急の本気を感じたことを思い出します。
一つの時代が終わろうとしているからこそ、現代に合うプレミアムな車両というものが登場することを、一人の小田急ファンとして期待してしまうのかもしれません。