新宿から小田原までを最短59分で結び、小田急の看板列車となっているロマンスカー。
60分を切る所要時間は、小田急が昔から目指していた目標であり、複々線化が完了した2018年のダイヤ改正でついに実現されました。

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しかし、最速列車では59分となったものの、多くの列車は60分以上をかけて新宿から小田原を結んでいます。
ロマンスカーのスピードアップは、なぜ困難なのでしょうか。

多くの列車を追い抜く最速のロマンスカー

小田急の悲願であった新宿から小田原を60分以下で走る列車は、2018年3月17日のダイヤ改正で登場しました。
所要時間は59分で、60分を僅かに切るというものではありますが、昔からの目標がついに達成された瞬間でした。

最速列車という位置付けのため、59分で走破する列車は当初から限られており、多くの列車は70分以上を要しています。
現在は土休日に運転されるスーパーはこね1号のみとなっており、ロマンスカーのスピードアップが難しいことをうかがわせます。

大前提として、新宿から小田原までをノンストップで走るスーパーはこね号は、運転本数自体が少ない希少な列車となっています。
ほとんどのロマンスカーは途中駅に停車する列車であり、そういった面でも59分で走破するのは難しいといえます。

スーパーはこね1号についても、途中駅で他の列車を多く追い抜くことで60分の壁を越えており、この列車のためのダイヤが組まれているのが実情です。
このような事情があるため、大量に設定することによる他の列車への影響が大きく、限られた本数にしているといえるでしょう。

スピードアップに需要があるのかという問題

ほとんどの列車が途中駅に停車するロマンスカーですが、かつては新宿から小田原までをノンストップで走る列車が主流でした。
はこね号の全てがそのような列車となっていましたが、1996年に町田が停車駅に加えられ、ノンストップの列車をスーパーはこね号にしたという経緯があります。

観光列車としてスタートしたロマンスカーですが、現在は日常の利用が主体となっており、停車駅の増加もそのような需要に対応したものです。
ノンストップで走る列車の需要が減っているということは、速達性という面の需要も減っていると考えられるため、スピードアップを重点施策とする意味はあまりないのでしょう。
速達性が求められるシーンといえばビジネスでの利用ですが、小田原には東海道新幹線が通っているため、そこを追い求めてもという面もあります。

ロマンスカーの日常利用についても、急行や快速急行の停車駅が増加する本厚木以西を除けば、スピードよりも快適性を求めていると想定されるため、所要時間を短縮するメリットはそこまでなさそうです。
ゆっくり座っていきたいと思うのであれば、必要以上に速くなくてもよいといえます。

観光での利用についても、速さより楽しさや快適性が求められる時代になっていそうですから、思い出に残るような旅を提供することのほうが大切になりそうです。
50000形(VSE)は、まさにそのような価値を提供する車両だったといえますが、近年はそういった棲み分けが曖昧になってきた印象もあり、将来的にどのような判断をするのかについても気になるところです。

おわりに

全線に渡って列車密度が高い小田急では、ロマンスカーのスピードアップは難しいのが実情です。
しかし、利用実態を考えれば速達性が求められるシーンばかりではないため、他の列車を犠牲にしてまでスピードアップを図る必要はないのでしょうね。