全ての駅に停車する列車を各駅停車と呼び、多くの鉄道会社で運行されています。
鉄道会社や路線によって呼び方は様々ですが、現在の小田急は「各駅停車」という表記を採用しています。

長年に渡って小田急では「各停」という省略形が使われましたが、なぜ変更されたのでしょうか。
今回の記事では、変更された理由について考えてみたいと思います。

各停から各駅停車への表記変更

小田急の車両では、各駅停車に対して各停という表示を使用してきました。
元々は種別自体を表示しないというのが基本でしたが、1998年に通過表示灯の使用を中止するのに合わせ、各停と書かれた種別表示を行うようになりました。

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各停の表示には青系の色が使われ、それ自体は現在も変わらずに続いています。
車両側では各停という省略形が使われていましたが、昔から駅の放送等では各駅停車と表現されており、表現は統一されていませんでした。
省略形にされた理由は定かではありませんが、昔は急行や準急という2文字の種別が基本であり、それに合わせたものと思われます。

そのような状況に変化があったのは2017年のことで、駅に設置されている行先案内表示装置における表記が各駅停車に変わりました。
後を追うように車両側でも変更が始まり、最終的に全ての車両が各駅停車に変更されています。

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2018年のダイヤ改正で新種別が登場するため、それに合わせて各駅停車への表記変更も行われたことになります。
各停という省略形に慣れていたため、正式名称への変更にはやや驚きました。

各駅停車に表記が変更された背景

長年に渡って使われた各停という表現をやめ、各駅停車に変更した背景には何があるのでしょうか。
その理由として考えられるのが、2016年から開始された3社での相互直通運転です。
小田急とJR東日本の車両もお互いに乗り入れるようになり、各停と表記することには課題が生じてしまいました。

東京メトロの千代田線とJR東日本の常磐緩行線内では、各駅停車という表記が使われていました。
小田急の4000形については、小田急線内では各停、乗り入れ先では各駅停車といったように表記をわざわざ変えており、路線に合わせたものを表示していたのです。
当時は小田急と千代田線を直通運転する各駅停車がなかったこともあり、このような面倒なことをしたのだと思われます。

そのような状況に変化が生じたのが2018年のダイヤ改正で、3社を直通運転する各駅停車が登場することとなりました。
路線を跨いでの走行となることから、途中で表記が変わるのを避けるため、小田急が他社に表記を合わせることで統一を図ったものと思われます。
こうして長年見られた各停という表記は姿を消し、正式名称が車両にも表示されるようになりました。

おわりに

見慣れていた各停という表記が消え、早くも5年が経過しています。
4文字の種別がある中で、各停という省略形を使う理由はなくなっていましたが、変更されずに続いていたのも面白いものですね。