車両の長編成化に合わせて、ホームの延長を繰り返してきた小田急。
異なる構造のホームが混在する駅も多く、最初から長くなかったという事実を今に伝えています。

古くからあるホームの多くは、盛土式と呼ばれる構造になっており、側面にはオレンジ色のステップが設置されています。
色の関係でステップは目立ちますが、なぜこのようなものが設置されているのでしょうか。

盛土式のホームに設置されたステップ

小田急の駅にあるホームを眺めると、昔ながらの盛土式となっている箇所には、オレンジ色に塗られたステップがあることに気付きます。
使われているのはL字型の鋼材で、真ん中ぐらいの高さに設けられています。

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実際の姿はというと、写真の右側にあるようなものとなっており、基本的に盛土式ホームのみで見られます。
盛土式ではない箇所には設置されておらず、ホームの下が空洞になっている場合にはありません。
部分的に空洞となっている箇所がある場合には、その部分だけが途切れた状態になっており、周囲がオレンジ色に塗られています。

現在はどのホームにも見られるこのステップですが、昔の写真等を見ると設置されていないことに気付きます。
ステップは後年になって設置されたものであり、他の鉄道会社でも同様となっています。

オレンジ色のステップが設置された理由

このようなステップが設置されたのは、2000年代前半のことでした。
設置は一気に進められ、あっという間にどの駅にもあるような状態になったと記憶しています。

ステップの設置が行われた背景には、2001年1月26日に山手線の新大久保駅で発生した痛ましい事故が関係しています。
酒に酔った男性がホームから転落してしまい、助けようと線路に2人が飛び降りますが、進入してきた電車に全員がはねられてしまったものです。
救助を試みた2人の勇敢な行動が美談として語られる一方で、ホーム上における安全対策や、転落してしまった際の避難方法について、大きな波紋を呼ぶこととなりました。

この事故をきっかけに、国土交通省からは列車非常停止ボタンの設置や、転落検知マットの整備等が鉄道会社に対して指導され、各社で対応が行われました。
オレンジ色のステップもこの事故を受けて設置され、ホーム上に少しでも上がりやすくするためのものです。
安全性をさらに高めるため、現在はホームドアの設置が進められつつあり、それだけこの事故が世間に与えた衝撃は大きかったといえそうです。

おわりに

万が一転落事故に遭遇した場合には、迷わず列車非常停止ボタンを押しましょう。
自分が転落した場合にはすぐに退避することが鉄則ですが、誰かの転落時に救助を試みて線路へと降りてしまうと、それは二次被害を生む恐れがあります。
線路に降りることは避け、1秒でも早く電車を停止させることが最も大切です。