2018年に現役を引退し、現在はロマンスカーミュージアムに先頭車が保存されている小田急7000形(LSE)。
晩年は昔ながらのカラーリングで人気を博しましたが、リニューアルの際には10000形(HiSE)に準じた姿とされ、オリジナルとは異なっていた時期がありました。

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HiSEの姿になった新塗装が先に消え、最後は旧塗装で活躍したLSEですが、なぜそのような結果になったのでしょうか。

旧塗装化されて活躍したLSE

長年に渡って3000形(SE)と3100形(NSE)で運行されてきたロマンスカーに、新型車両のLSEが登場したのは1980年のことでした。
全体的にシャープなデザインとされましたが、NSEの流れを踏襲したスタイルとなっており、カラーリングについてもイメージが合わせられています。

小田急のロマンスカーといえば、このカラーリングであるというぐらい定着していましたが、続いて登場するHiSEではついにイメージチェンジが図られ、その後は形式ごとに違うカラーリングが採用されるようになりました。
その後もLSEはNSEと同様の姿で活躍を続けますが、1995年度から開始されたリニューアルにおいて、新塗装と呼ばれるHiSEに準じたカラーリングへの変更が行われています。

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こうしてLSEでは見られなくなった旧塗装の姿ですが、小田急の開業80周年等を記念し、2007年に1編成だけながら懐かしい姿が復活しました。
細部には異なる点があるものの、旧塗装は絶大な人気を誇るようになり、当初は2007年度内で運行を終了する予定だったものが、それ以降もそのままの姿で走ることとなりました。

その後も1編成だけが旧塗装という状態が続きましたが、2012年にLSEが残り2編成となるタイミングで珍事が発生し、新塗装の1編成についても旧塗装化が行われたのです。
こうして新塗装のほうが先に姿を消し、LSEは晩年を懐かしい姿で過ごすこととなりました。

旧塗装に統一された背景

最終的に旧塗装へと統一されたLSEですが、前提として旧塗装化した編成の評判があまりにもよかったという点があります。
在籍する編成数が少なくなり、残りが2編成だけになったことで、在庫として持つ塗料を統一したいという思惑もあったのかもしれません。
しかし、LSEの旧塗装への統一は、人気があったからという理由だけでは片付けられないともいえます。

HiSEに準じたカラーリングであった新塗装は、2012年の時点で大義名分を失いつつありました。
カラーリングの変更が行われた理由として、用途に応じたイメージの統一を図るという目的があり、前面展望席を備えたLSEとHiSE、分割併合が可能な30000形(EXE)、御殿場線に乗り入れる20000形(RSE)のように、外観のイメージを整理したのです。

LSEが旧塗装に統一された2012年といえば、HiSEとRSEが同時に引退するタイミングであり、もはやLSEが新塗装である必要がなくなっていました。
当時は既に岡部憲明氏がデザインを担当した車両が主力であり、クラシックな要素をあえて押し出すことで、ラインナップの差別化を図ったともいえます。

こうしてLSEは旧塗装に統一され、狙いどおりなのかは定かではないものの、懐かしい姿のロマンスカーは人気を博すこととなります。
新しい車両たちに混ざり、多くの方に愛される晩年を過ごすことができたのは、LSEにとっても幸せな展開だったことでしょう。

おわりに

バリアフリー化の問題から、後輩のロマンスカーが次々に引退せざるを得ない状況となり、そのような予想外の展開に対応した結果だったともいえます。
旧塗装に比べると人気の面では劣っていた新塗装ですが、消えてしまうと少々寂しく感じました。