安全対策の強化として、既存構造物の耐震補強等を進めている小田急。
首都直下型地震がいつ起きてもおかしくないといわれる中で、被害を最小限にする対策が求められています。

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小田急には開業当時からの構造物が多く残っており、使用開始から100年が経過しようとしています。
架け替えや交換が行われた場所も増えてきてはいるものの、延命を図らなければいけない苦しい事情も見えてきます。

開業当時からの構造物が残る小田急

小田急の本線である小田原線は、1927年4月1日に開業しました。
2年後の1929年4月1日には江ノ島線も開業し、多摩線を除いた路線網が成立しています。

二つの路線に共通することは、全線を一気に開業しているという点で、半年程度は小田原線に単線区間があったものの、早々に全線が複線の状態となりました。
鉄橋やトンネル等については、開業当時から使い続けられているものが多く、架線柱等の小規模な構造物にも開業時からのものが残っています。

多摩川橋梁や相模川橋梁のように、架け替えが行われたケースも存在しますが、再塗装による延命が発表された酒匂川橋梁等は、今も開業時からの構造物が使用されています。
小さな橋についてはさらに顕著で、今後は使用期間が100年を超える構造物が多発することになります。

適切なメンテナンスを行えば、鉄橋は長く使えるといわれており、100年を超えるものも少なくはありません。
酒匂川橋梁の延命も今後の使用を見据えてのものといえそうですが、渋沢から新松田の間に存在する多くの橋梁等、気にしなければいけない場所は沢山ありそうです。

構造物の延命が必要な事情

メンテナンスによって、使えるものを長く使うのは大切なことですが、そうせざるを得ない苦しい事情も見え隠れします。
小田原線と江ノ島線が同時期に全線開業しているということは、構造物の経過年数が揃っていることも意味しており、一気に更新をすることは不可能でもあります。

当然のことながら、橋梁の架け替え等を行う場合には、多額のコストがかかります。
さらに、全線に渡って輸送密度が高い小田急では、列車を運行しつつの工事が必須となるため、更新自体も簡単ではありません。
複々線化や高架化に合わせて、構造物が刷新された区間も存在しますが、それ以外には古い構造物が沢山残っています。

耐用年数が揃っているということは、それらをずらしていく必要もあるのでしょう。
老朽化の具合を見つつ、できる限りの延命により更新時期をずらすことは、とても重要な対策ということになりそうです。

おわりに

100年近く使われている構造物が沢山あるという事実は、それだけ大切に使われてきたということなのかもしれません。
まだまだ使い続けるものも多そうですが、どの程度まで長寿命となるのか、そんなことも気になってしまいました。