現在は数が少なくなってしまったものの、小田急ロマンスカーの特徴といえば、乗客が最前部に座ることができる展望席が有名です。
3100形(NSE)からスタートした前面展望席の伝統は、その後多くの車両に受け継がれることとなりますが、乗客が最前部に座ることで安全上の課題が生まれ、万が一の衝突事故に対する備えが求められました。

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展望席に座る乗客を守るため、ロマンスカーの前面にはある装置が装備されていますが、それはどのようなものなのでしょうか。

乗客を不慮の事故から守る油圧ダンパー

ロマンスカーにおける前面展望席は、1963年に営業運転を開始したNSEから始まりました。
日本国内での採用は、名鉄のパノラマカーに先を越されてしまいましたが、後継車両にも次々と採用されたことにより、小田急ロマンスカーのイメージとして定着することとなります。

前面展望席は、運転室を通常よりも高い2階に上げることで、客席を車両の最前部に配置することを実現したものですが、衝突事故が発生した際の対策が課題となりました。
乗客が最前部に位置している状況は、被害を受ける可能性が高くなることを意味しており、それを防ぐ必要があったのです。

そこで、NSEでは衝突時に乗客を保護することを目的として、前面に油圧ダンパーが搭載されました。
油圧ダンパーは前照灯部分に一体化され、車体から飛び出したデザインとなっています。
同様の装備は名鉄のパノラマカーにも見られ、万が一の事態から乗客を守っているのです。

小田急においては、幸いにも油圧ダンパーが活躍したことはないようですが、パノラマカーはダンプカーと衝突した過去があります。
油圧ダンパーは想定どおりの役割を果たしたようで、乗客の一部が割れたガラスで軽傷を負ったものの、被害を最小限とすることに貢献しました。

油圧ダンパーは現在も搭載されているのか

乗客を守るために搭載された油圧ダンパーですが、その後のロマンスカーにも搭載されているのでしょうか。
NSEの次に登場した7000形(LSE)は前照灯が埋め込まれており、油圧ダンパーらしきものは見あたりません。

LSEには油圧ダンパーが搭載されていないのかというと、もちろんそんなことはありません。
油圧ダンパーは前照灯と同様に埋め込まれ、車体の中に搭載されるようになりました。
前面に展望席を備えるロマンスカーについては、その後に登場した車両も油圧ダンパーを搭載し続けており、今も万が一の事態から乗客を守り続けています。

おわりに

最前部に乗客が位置するという特殊性から、安全対策として装備されるようになった油圧ダンパー。
この装置がこれからも活躍せずに済むのが最善ではありますが、万が一の際にはしっかりと役目を果たしてくれることでしょう。