列車ごとにはこね号やさがみ号等の愛称が付けられ、終日に渡って多くの本数が運行されている小田急
のロマンスカー。
かつては前面に愛称が掲げられる車両が多く、どのような列車が通過しているのかを確認するのも、楽しみの一つでした。

特急列車の象徴でもあった前面の愛称表示ですが、近年は設置されない車両が増えており、ないことが当たり前となりつつあります。
前面にあると絵になるように思える愛称表示は、なぜ廃止傾向となっているのでしょうか。

少数派となってきた前面に愛称表示がある車両

前面の愛称表示は、初代のロマンスカーとして登場した1910形が初めて採用しました。
運行開始からしばらくの間は、社紋が入った特急と書かれたヘッドマークが使われたようですが、後に愛称が書かれたものを掲出するようになります。

ヘッドマークは金属製の板であり、1700形、2300形と同様の流れが続きます。
ロマンスカーの価値を飛躍的に高めた3000形(SE)についても、編成短縮を行う前は金属製のヘッドマークを使用していました。

3100形(NSE)からは樹脂プレートに進化し、SEについても改造により同様のものとなります。
久々の新型ロマンスカーとして登場した7000形(LSE)では、曲面部への設置ながら幕式とされ、NSEも更新時に合わせられました。
しかし、続く10000形(HiSE)では前面の愛称表示自体が廃止され、先頭車の側面に設置されるという変化があり、前面の印象が大きく変わることとなります。

HiSEでの変更はその後の車両に波及せず、20000形(RSE)ではLEDに進化し、前面と側面の両方に設置され、30000形(EXE)も続くこととなります。
岡部憲明氏がデザインを担当するようになった50000形(VSE)以降は、基本的に廃止の傾向となり、70000形(GSE)についても愛称表示はありません。

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30000形をリニューアルしたEXEαについても、更新時に前面の愛称表示を廃止しており、設置しない方針であることが読み取れます。
唯一の例外は60000形(MSE)ですが、千代田線内で運行番号を表示する必要があることから、小さなものが設置されています。

前面の愛称表示はなぜ廃止されていくのか

前面から愛称表示が消えていくことは、寂しいと感じる部分もありますが、どのような理由によるものなのでしょうか。
一時的な廃止例となったHiSEについては、はこね号でしか使わない想定だったことから、側面だけで十分という判断があったようです。

RSE以降の車両では、側面にも表示装置を設置することが当たり前となり、現在は駅での案内も充実した状態となっています。
これが前面の愛称表示を廃止する動きに繋がっており、既に必要性が薄れているという判断のようです。

加えて、前面に愛称表示を設けることは、デザインの制約が増えることにも繋がるそうで、なくなるのは当然の流れということになります。
MSEの表示が小さなものとされたのも、デザインに与える影響を最小限とするためなのでしょうね。

おわりに

様々な案内が充実し、役目を終えつつある前面の愛称表示。
前面の表示でどのような列車なのかを確認することは、確かに現代において少なくなっており、今後も設置されないことが基本となりそうです。