鉄道駅バリアフリー料金制度の活用により、37駅にホームドアを整備する計画の小田急。
2023年3月18日には運賃が改定され、ホームドア等の整備に使用するための加算が始まりました。

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車両の整理も済み、今後は整備が加速すると思われたホームドアですが、2023年度については2駅での稼働開始予定にとどまりました。
設置のペースが加速しない状況ですが、背景には何があるのでしょうか。

当初の予定より遅れているホームドアの設置

小田急が発表していた数年前の計画では、1日の利用者数が10万人以上の駅に対して、ホームドアを設置する予定となっていました。
利用者が多い駅を優先する予定で、他の駅の設置予定は不明という状況でしたが、鉄道駅バリアフリー料金制度の活用によって設置駅は増加し、2032年度までの完了を目指すこととなりました。

そこで気になるのが、元々の計画ではいつまでに設置を完了する予定だったのかという点です。
中長期の計画は変わるものですが、2019年度時点の発表では、2022年度までに以下の駅に対して設置が完了する予定でした。

・新宿
・代々木八幡
・代々木上原
・東北沢
・下北沢
・世田谷代田
・梅ヶ丘
・登戸
・新百合ヶ丘
・町田
・相模大野
・海老名
・本厚木
・大和

現在は2023年度ですが、新百合ヶ丘、町田、相模大野、海老名、本厚木、大和については、2022年度の時点で設置完了には至っていません。
大規模改良工事の関係で設置が延期された新百合ヶ丘や、本厚木のように一部は使用を開始したケースもありますが、当初の予定より遅れている状況です。
設置の準備工事は進んでいる駅が多いものの、予定どおりには進まない苦しい状況といえます。

ホームドアを設置するペースが上がらない背景

最終的にホームドアを設置する駅の数は増えたものの、当初の予定より遅れている状況が続いています。
2023年度が終わる時点でも、2022年度までに設置が完了する予定だった駅が残り、設置のペースは鈍化したままです。

大前提として、新型コロナウイルス感染症という想定外の事態に直面し、計画を変更せざるを得ない状況だったことは理解できます。
しかし、現在もペースが上がらない状況を鑑みると、他にも理由がありそうに思われます。

いつの間にかという表現は適切ではないかもしれませんが、「鉄道駅バリアフリーに関する整備計画」という最近発表された資料において、小田急はホームドアの整備を進めるうえでの課題に触れています。
そこでは二つの課題について触れており、盛土のホームで補強方法を確立することと、半導体の不足によるホームドア本体の納入遅延があげられていました。

昔からのホームが使われている駅においては、現在も盛土式のものが多く存在します。
延長により構造が混在している駅もあり、なお一層大変なのだと思いますが、技術的な課題は時間が解決してくれるものと思われます。

JR東日本においては、半導体の不足を理由に整備の延期を発表した駅があり、小田急においてもやはり大きな影響を受けているといえそうです。
今後半導体不足が解消してくれば、設置のペースが加速できるのかもしれませんが、長引いてしまった場合には、設置計画の見直しに発展する恐れもあります。

各社で一斉にホームドアの設置が進むことで、需要過多に陥らないのかという点も心配です。
年間にどれぐらい製造できるのかは分かりませんが、設置したくても設置できない状況にならないことを願うばかりです。

おわりに

ホーム側の準備が進んでいるのに対して、なかなかホームドア自体の設置が進まない小田急。
準備だけは先行していますが、半導体の不足等によって設置のペースを上げられず、全体的な遅れに繋がっているのかもしれませんね。