全線に渡って利用者が多く、思いきった系統分離がしにくい小田急の小田原線。
終点の小田原まで10両の快速急行が走る中、新松田から小田原、小田原から箱根登山線の箱根湯本については、細かく折り返し運転を行う区間となっています。

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新松田から箱根湯本まで、一つの系統として繋いでしまえば都合がよさそうですが、なぜそれを行っていないのでしょうか。

効率的な運行が難しい小田原線の末端区間

終点の小田原が近付く新松田は、小田原線の輸送上における境界駅となっています。
開成が急行停車駅となり少し事情が変わりましたが、新松田から小田原にかけては、駅に停車する本数が半減する区間となっており、小田急の中で最も停車する列車の本数が少ない駅が並びます。
栢山から足柄にかけては、ホームの長さが短いという制約もあり、減便時以降は6両の急行が走ることにも繋がりました。

新松田から小田原にかけては、1時間あたりラッシュ時には4本から5本、日中は3本の列車が運行されています。
途中駅の中で、開成だけは急行が停まるため、他の駅よりも本数が多くなります。

以前は新松田から小田原にかけて、折り返し運転を中心としたダイヤが組まれていましたが、2022年に減便を行ったタイミングから、町田や相模大野とを結ぶ6両の急行を新松田で種別変更し、通して運転するようになりました。
新宿寄り区間の混雑緩和を優先するのか、運用の効率を優先するのかが悩ましい部分で、長年に渡って試行錯誤が続いているように思います。

箱根登山線との直通運転は難しいのか

正解を導くのが難しい小田原線の末端区間ですが、もう一つ悩ましい問題があります。
それは小田急の車両で運行される箱根登山線で、小田原から箱根湯本という短い区間に対して、折り返し運転を行っているのです。

そこで気になるのが、新松田から箱根湯本にかけての運行を一体化し、新松田で系統を分けられないのかという点です。
急行が新宿から箱根湯本までを走っていた時代が終わり、箱根登山線内が各駅停車になったのは2008年ですが、この頃は小田急と箱根登山線を直通運転する列車も多く存在し、後になくなって今に至ります。

ダイヤが乱れた際に、復旧をしやすくするといった事情がありそうですが、大前提として両区間は列車の両数が異なります。
小田急線内は6両なのに対して、箱根登山線内は4両での運行となっており、直通運転をしようとすれば、必然的に4両とする必要があります。
箱根登山線内を6両の運行に対応させる手もありますが、風祭駅を改良する際に4両分にホームを縮めた経緯もあり、簡単ではないのでしょう。

ここで疑問に思うのが、昔はなぜ4両での直通運転を行っていたのかという部分です。
その背景には、新松田から小田原にかけての利用者が、当時と比べて増加したことがあるとみられます。
さらに、2016年のダイヤ改正において、小田急は30分ヘッドから20分ヘッドへの変更を行ったため、この区間の運行本数は4本から3本に減ってしまい、輸送力の面ではより一層厳しくなりました。

輸送力を単純に比較すると、1時間に4両が4本であれば16両分、6両が3本であれば18両分であり、これが12両になるとさすがにインパクトがあります。
一方で、輸送力の減少を許容すれば、町田や相模大野から10両の急行を新松田まで走らせられるため、全く選択肢にならないということもなさそうです。
町田や新松田の折り返し設備を改良することで、設備面の制約が多少は解消するため、輸送力の減少というデメリットを除けば、課題の解決に寄与する部分もあります。

1000形の4両は7本となりましたが、新松田から箱根湯本までを一体化する場合に、最低限必要な本数になっているようにも思うため、将来的な可能性は残しているのかもしれません。

おわりに

設備面での制約により、輸送上の境界をどこにするか、常に試行錯誤をしているように感じる小田急。
新松田から箱根湯本までを直通運転すれば、小田原駅での分断がなくなるという面でもメリットがあるため、何かよい解決策があるとよいのですが、なかなかパズルのピースがはまらないのでしょうね。