快速急行を補完する役割を担い、全線で運行されている小田急の急行。
多くの列車が10両で走りますが、運行区間が短かったり、編成が6両の列車がある等、様々なパターンが見られる列車種別となっています。

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そんな小田急の急行ですが、停車する駅の利用者数はどうなっているのでしょうか。
駅や路線ごとにどのような差があるのか、見てみたいと思います。

急行停車駅の乗降人員

小田急の全線で運行される急行は、かつてロマンスカーを除く列車の最上位種別でした。
しかし、2002年に湘南急行が登場したことで最上位の立場が変化し、2004年に湘南急行が快速急行へと発展したことで、位置付けは大きく変わりました。

快速急行の運行本数が増加したことで、現在の急行は補完的な立ち位置となっており、かつての急行と準急のような関係が見られます。
快速急行が停まらない駅の利便性確保や、運行本数が少ない区間の合間を埋める役割が強くなり、昔とは性格が異なる列車種別となりました。

急行の停車駅は、昔から徐々に増加する傾向が続いており、近年も経堂や開成が加わっています。
路線が長いこともあり、各駅の利用者数には差がある状況で、そんな点も急行ならではといえるかもしれません。

実際にどれぐらいの差があるのかについては、2022年度の駅ごとの乗降人員で確認してみたいと思います。
急行が停車する各駅における、1日の平均乗降人員については以下のとおりです。

【小田原線】
新宿:410,970人
代々木上原:237,023人
下北沢:112,116人
経堂:75,323人
成城学園前:74,920人
登戸:146,926人
向ヶ丘遊園:51,926人
新百合ヶ丘:108,661人
町田:246,459人
相模大野:110,249人
海老名:123,222人
本厚木:114,922人
愛甲石田:40,799人
伊勢原:44,098人
鶴巻温泉:12,737人
東海大学前:32,462人
秦野:35,053人
渋沢:22,683人
新松田:19,352人
開成:11,766人
小田原:53,079人

【江ノ島線】
中央林間:89,178人
南林間:29,406人
大和:107,131人
長後:30,546人
湘南台:82,372人
藤沢:150,074人
片瀬江ノ島:18,112人

【多摩線】
栗平:21,918人
小田急永山:26,493人
小田急多摩センター:43,358人
唐木田:13,716人

結果はこのようになっており、最も多い新宿の410,970人から、最も少ない開成の11,766人まで、かなりの差があることが分かります。
路線が長い小田急なので当然ではありますが、その差は約35倍となっており、なかなか興味深い結果となりました。

乗降人員から分かる停車駅の特徴

駅ごとの差が大きい急行停車駅の利用状況ですが、区間を絞ると違った傾向も見えてきます。
また、急行が停まらない駅の利用動向を見ていくと、停車要望が多くなる理由も分かる気がしました。

小田原線の新宿から本厚木までの区間は、100,000人以上の駅がかなり多いというのが特徴です。
その基準を下回っているのは、経堂、成城学園前、向ヶ丘遊園の3駅ですが、いずれも快速急行の通過駅であるという共通点があります。
これらの駅が通過駅とされ、さらに登戸が後から停車駅に追加されたことについても、利用状況の面では合理性があるといえそうです。

同様の傾向は江ノ島線にもあり、快速急行が通過する南林間と長後の利用者が少なく、停車駅の選定に影響したことが見えてきます。
一つ不幸なことがあるとすれば、駅間距離が極端に短い南林間と鶴間の利用者を足すと56,437人になることで、駅が近すぎて分散している傾向も分かりました。

小田原線に戻り、急行が停車しない駅の利用動向も確認すると、さらに面白い結果が見えてきます。
50,000人前後でも急行停車駅となっている小田原線ですが、千歳船橋、祖師ヶ谷大蔵、狛江、生田、鶴川、玉川学園前、小田急相模原等の利用者も多く、40,000人から60,000人の間に位置しています。
実際に急行の停車が要望されている駅もありますが、停車駅は利用者が多いことだけで決まらず、近隣にある駅の利用状況にもかなり左右されることが分かります。
準急の停車によってカバーされている面や、学生中心で時間帯によって差があるといったことも背景にあるとみられ、なかなか興味深いところです。

多摩線については他の路線よりも利用者自体が少なく、数字の面では差があることが分かります。
加えて、急行が通過する駅も10,000人近い利用者はいるため、あえて通過運転をするほどの差ではないことから、日中を中心に新百合ヶ丘で各駅停車に種別変更をすることにも、一定の合理性があるといえそうです。

おわりに

利用状況に合わせつつも、駅の位置が停車駅の選定に影響していることが分かります。
既得権の関係で停車駅を通過するように変更するのは容易ではなく、そのあたりが新種別の登場にも繋がっているのでしょうね。