新百合ヶ丘から分岐し、多摩ニュータウンに向かって走る多摩線。
小田急の中では最も新しく開業した路線で、比較的短い距離を走っています。

20190519_06

そんな多摩線ですが、沿線が成熟しつつある現在においても、小田原線と比較して利用者が少ない状況となっています。
昔に比べれば空き地がなくなったと感じる中、なぜそのような違いが生まれるのでしょうか。

小田原線と比較して少ない多摩線の利用者

昔に比べれば混むようにはなったものの、多摩線の電車に乗った際には、小田原線や江ノ島線よりも空いていると感じます。
路線自体が短いため、それ自体は当たり前のことですが、列車の運行本数も少ないことから、より一層そのように感じるのかもしれません。

距離の短さや列車の本数により、空いているように見えるだけなのかというと、実際にはそうでもありません。
利用者が小田原線よりも少ないことは数字にも表れており、1日の平均乗降人員には差が見られます。
新宿から同じぐらいの距離感にある小田原線の駅については、少なくても30,000人ぐらいなのに対して、多摩線は10,000人を切るような駅も多く存在します。

小田原線には町田という別格の駅があるため、単純に数字だけを比較しても意味はありませんが、多摩線の利用者が小田原線よりも少ないのは事実でしょう。
一方で、のんびりしたその雰囲気が多摩線の魅力でもあり、プラスに働いている面もあるといえます。

なぜ小田原線より利用者が少ないのか

多摩ニュータウンの開発に合わせて造られた多摩線は、1974年に小田急永山までが開業、翌年には小田急多摩センターまで延伸し、現在は唐木田が終点となっています。
中心部である多摩センターには京王の相模原線も乗り入れており、都心部への輸送では競合する関係にあります。
小田急が京王に勝っているかといえば、そうとはいえないのが実状ではありますが、利用者の少なさはそれだけで説明できるほど簡単ではありません。

住宅不足の解消を目指して建設が始まった多摩ニュータウンでしたが、オイルショック等の影響で東京への人口流入がペースダウンし、後に計画人口の引き下げが行われました。
新宿に向かう二つの路線は、この計画変更により結果的にやや過剰な輸送力となっています。

多摩ニュータウンの規模が縮小されたことは、多摩線の利用者が増えない理由の一つですが、新百合ヶ丘からはるひ野にかけての状況が、多摩線の利用者を少なくすることに拍車をかけています。
これらの駅の周辺は、用途地域が第一種低層住居専用地域となっている場所が多く、都県境付近を中心に市街化調整区域も存在し、緑が豊富な場所も多くあります。
マンション等の大規模な住居が少なく、比較的広い土地に建てられた低層住居が多いため、人口密度が低い地域となっています。

利用者が少なくなる理由には、他の交通機関が与える影響もあります。
栗平の北側には平尾団地がありますが、駅へのアクセスはあまりよくなく、バスで新百合ヶ丘にも出られる状況です。
五月台は南側が小田原線の柿生と徒歩圏が重なってくるほか、黒川は京王の若葉台駅が選択肢となることも多く、多摩線は利用者が増えない様々な事情を抱えています。

五月台、栗平、黒川、はるひ野の各駅については、駅前に路線バスが乗り入れておらず、コミュニティバスの運行が見られる程度となっており、駅から離れた場所からの利用者も多くありません。
多摩線は学生の利用も多い路線であることを鑑みると、乗降人員の数字以上に空いていると感じるのかもしれませんね。

おわりに

様々な事情が重なり、どうしても利用者が増えることには限界がある多摩線。
開業からまもなく50年を迎えますが、沿線の高齢化も進んでいることから、今後は利用者の減少に向き合う時期が訪れそうです。