複々線化やリニューアルが進められたことで、昔ながらの姿を残す小田急の駅は少なくなりました。
洗練されたスタイルの駅は利用しやすいものの、どこか風情があった昔の姿を懐かしく思う時があります。

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懐かしい小田急の駅を語るアイテムは色々とありますが、ホームに設置された長すぎるベンチもその一つです。
昭和を感じられたそのベンチは、どのようなものだったのでしょうか。

世田谷代田駅に残っていた長すぎるベンチ

複々線化時に地下へと移った世田谷代田には、昔ながらの長いベンチが残っていました。
長いベンチというよりは、長すぎるベンチと表現したほうがよいもので、地上にホームがあった時代の象徴的なアイテムでした。

長いベンチは木材で造られており、壁と一体化していることが特徴で、暗めの茶色で塗られていました。
昔は多くの駅で類似のものが見られましたが、徐々に姿を消していってしまい、世田谷代田のベンチは貴重なものとなっていたのです。

昭和の懐かしさを平成という時代にも残していたベンチは、2000年代になっても貴重なアイテムとして存在し続けます。
しかし、地下化を伴う複々線化は容赦なく世田谷代田にも及び、昔ながらの風景は消えてしまいました。

長すぎるベンチが設置された経緯を考える

人が少ない時はゆったり、混雑している時は詰めて座れる長いベンチは、電車のロングシートのように便利なものでした。
酔客の転落防止を目的として、ベンチが枕木方向に変えられつつある現代においては、再登場を望むことは難しそうですが、使いやすい面も多かったように思います。

私はこのような形態のベンチが沢山ある時代を体験できなかった世代ですが、昔の写真を眺めているとあることに気付きました。
昔のホームには、中央部に屋根が設けられた待合室のようなものがありますが、そこにこのようなベンチが多く見られます。
そのまま引き継がれたのかは定かではないものの、そのような時代からの名残ということになるのでしょうか。

待合室はお世辞にも広いとはいえないため、着席部を最大化するという意味でも、このような長いベンチは有効だったのかもしれません。
それ以外の場所には上屋すらないような時代ですから、雨や風が避けられる貴重なスペースだったのでしょうね。

おわりに

世田谷代田から長いベンチが消えてからでさえ、既に長い年月が経過しつつあります。
どの駅も近代化により姿を変えていますが、古いものが消えれば消えるほど、昔の風景が懐かしくなってしまうのかもしれません。