徹底的なリニューアルを8000形や1000形に施工してきた小田急は、3000形に対してポイントを絞った対応を行うという方針転換をしました。
登場から年数が経過した車両に対しての更新工事は、昔から行われている対応ではありますが、時代によって内容には変化があります。

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他社でも似たような傾向はあると思いますが、小田急においてはどのような変化があったのでしょうか。

車体を中心とした更新の時代

戦後から本格的に行われるようになった更新工事は、当初車体を中心にしたものでした。
老朽化や陳腐化した状況を改善することが主な内容で、戦時中から戦後にかけての粗悪な車体について、一新するようなものもありました。

有名なケースとしては、国鉄の63系から生まれた1800形があり、台枠を流用して車体を一新する更新が行われています。
車体を一新するほどではないものの、古くなった車両の車体を修繕して改善し、整えていく対応は多く見ることができました。

2600形が登場し、小田急に大型車の時代が訪れると、従来車の機器を流用して車体を新造した4000形が造られ、これも広い意味での車体更新にあたります。
使える機器は活用し、車体を更新するのが昔のスタンダードであり、メンテナンスをしっかりと行えば、機器の寿命が長かった時代ならではなのかもしれません。

車体のサイズや冷房の有無を理由として中型車が廃車になる頃、小田急では大型車の更新が始まります。
2600形は車体の修繕を行い、4000形も2400形のモーターを流用することで、再び車体を流用した更新となりました。
この頃には内装にも手が加えられるようになりますが、大きくイメージを変えることはありませんでした。

車両全体から機器を中心とした更新に

2600形や4000形に続いて、5000形や9000形の更新が始まると、内装を一新することが通常のメニューとなってきます。
8000形で採用した柄の入った化粧板が使われるようになり、新車との間で生じるイメージの差を埋める傾向がみられます。
更新の後期では寒色系から暖色系への変更も当たり前となり、年を重ねるごとに内装の更新内容は強化されていきました。

現在も走る8000形については、車体や内装の更新内容が最大化する中、ついに足回りの機器を一新する対応が加わります。
機器の構造が単純だった時代とは異なり、部品の不足やメンテナンスのしやすさ、省エネルギー化等が重要視されるようになってきたことで、車体だけを改善すればよいという時代ではなくなってきたのでしょう。
8000形の場合は、下北沢付近の地下化も背景にありそうですが、更新というより新車化と表現したほうがよいのかもしれません。

1000形についても同様の傾向が続きますが、更新内容が多岐に渡ってしまった影響か、途中で打ち切りになるという展開がありました。
更新内容が広がれば広がるほど、新車を導入する際のコストと見合わなくなるため、経営的な判断が強く働いたものと思われます。

現在更新が進められている3000形では、このような反省点を活かした対応がとられており、主要な機器の交換を中心として、ポイントを絞った対応が行われています。
全てを一新するのではなく、車体や内装は必要な部分のみ対応し、機器については引き続き交換を行うという内容に変化しました。

おわりに

機器を流用して車体を活かす時代から、車両全体を更新する方向へと進んでいった小田急。
近年は更新内容が広くなりすぎてしまったためか、3000形は車体を活かして機器を一新する対応へと変わり、昔とは逆の方向に落ち着きつつあるのかもしれませんね。