年々数を減らし、現在は数えられるほどしか運行されなくなった向ヶ丘遊園行きの各駅停車。
かつての小田急では各駅停車の主要な行先でしたが、本厚木まで走る列車ばかりとなりました。

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近距離を結ぶ代表的な各駅停車だった向ヶ丘遊園行きですが、現代においての利用価値はないのでしょうか。

数少なくなった向ヶ丘遊園行きの各駅停車

最近はあまり聞かなくなりましたが、小田急は向ヶ丘遊園駅を境として、新宿側をサバー区間、小田原側をインター区間と称しています。
現代の姿からは想像しにくいですが、昔は向ヶ丘遊園以西で開発されている地域が少なく、今以上に列車の運行本数には差がありました。

時期によって異なるものの、以前は新宿寄りほど多くの各駅停車が設定され、現在の倍近くの本数が走っていたこともあります。
各駅停車自体の本数が多いため、実用上の問題はそこまでありませんでしたが、向ヶ丘遊園より先の区間を利用する方からは、嫌がられる存在でもありました。

そんな向ヶ丘遊園行きでしたが、郊外の発展に合わせるかのように少しずつ本数が減り、気付けば少数派の行先となっています。
平日の場合、新宿発は1日に3本、千代田線からの列車を加えても7本しかありません。
当たり前に見られた行先は、すっかり希少なものとなってしまいました。

向ヶ丘遊園行き各駅停車の利用価値

少なくなってしまった向ヶ丘遊園行きの各駅停車ですが、列車種別の縛りを外すと違った結果が見えてきます。
準急や急行を加えると、平日は42本もの向ヶ丘遊園行きが存在しており、現代では優等列車を中心に使われる行先となっているのです。
優等列車は全て東京メトロの千代田線と直通運転をする列車で、複々線区間を活かしたダイヤが組まれています。

急行が多くなった等の変化はあるものの、このような状態となったのは2018年のダイヤ改正で、代々木上原から登戸までの複々線が完成したことを受けてのものでした。
複々線区間を有効に活用しつつも、ダイヤ乱れが発生した際の影響を避けたいということなのか、優等列車が各駅停車よりも短距離の走行となっており、一般的に上位の列車種別ほど長距離を走ることを踏まえると、やや違和感のある設定となっています。
当然のことながら、向ヶ丘遊園に近いほど利用者は少なく、小田急線内の中では空いている列車といえるでしょう。

本来であれば各駅停車にしたいところなのでしょうが、他社線でダイヤが乱れた際の影響が大きいことや、新宿から代々木上原までの数駅をどうするのかという問題があります。
新宿からの各駅停車を半数程度向ヶ丘遊園行きとして、千代田線との直通列車を準急で本厚木まで走らせる手もありますが、走行距離が一気に長くなる問題が発生します。
以前のように多摩線に流しても、今度は新百合ヶ丘から先の各駅停車がなくなってしまいます。

考えれば考えるほど、どこかのバランスがおかしくなってしまう、それが実際のところなのかもしれません。
新百合ヶ丘から小田原までを6両で走る各駅停車も考えてみましたが、さすがに編成が短すぎるように思います。
途中の駅で大胆に列車種別の変更を行わない限り、まともなバランスを保つのは難しいのかもしれませんね。

おわりに

少数派となり、ほとんど見られない存在となったものの、走行距離の面からは各駅停車が最適といえる向ヶ丘遊園行き。
遠近分離を上手く実現できるような、理想的なダイヤパターンがないのかを想像するのも、この趣味の楽しさなのでしょうか。