小田急多摩線の終点である唐木田駅において、引退を間近に控えた50000形(VSE)のイベントが開催されました。
近年では珍しくなった駅構内を使用したイベントで、普段は静かな唐木田が別の駅かという状況でした。

人で溢れ返るというほどではなかったものの、手作り感のあるイベントで楽しむ親子が沢山見られ、今後の可能性を感じさせられました。

昔は多く見られた駅構内のイベント

昭和の終わりから平成の初期にかけてでしょうか、小田急では駅構内でイベントが開催される機会がありました。
現代よりも色々な面でゆるい時代であり、利用者が少ない駅もあったことから、実施しやすかったのでしょう。

その頃に見られたイベントとしては、新百合ヶ丘でモハ10を展示したものや、小田急多摩センターで行われた10000形(HiSE)のブルーリボン賞授賞式等がありました。
2200系列のさよならイベント等も行われた過去があり、利用者が少なかった多摩線は使いやすかったのでしょう。

利用者の増加や、列車の運行本数が多くなったためか、やがてこのようなイベントは見られなくなり、海老名検車区で行われるファミリー鉄道展に集約されていったように思います。
新型ロマンスカーの運行開始や引退時には、起終点の駅でイベントが行われますが、あくまでも短時間のセレモニーといった印象です。

今後も活用できる可能性がある唐木田駅

列車の運行本数が多くなり、昔以上に安全が優先されるようになった現代において、駅構内でのイベントは難しいものとなったのでしょう。
しかし、唐木田でのイベントを見て感じたのは、意外と今後も可能性はあるのではということでした。

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後々貴重になりそうなVSEともころんのツーショットですが、唐木田という場所がイベント向きであることが見えてきます。
今回VSEが展示された1番ホームは、車両の展示にかなり向いているのです。

まず、1番ホームだけが相対式のホームであり、かつ十分な広さがあります。
階段やエレベーターは車庫側に寄っており、ホーム自体に障害物が少なく、空間という面でも十分な余裕があるほか、新百合ヶ丘方は上屋がなく空が見えるのです。

今回のイベントでは、1番ホームへの導線が完全に分けられ、電車への乗り降りをする2番ホームや3番ホームと行き来するには、改札を通る必要がありました。
当日は列車の発着番線が変更されており、2番ホームと3番ホームに集約されていましたが、日中に優等列車の運行がなくなったことも、プラスに作用したといえそうです。

安全性の面でも、唐木田はイベント向きといえる点があります。
相対式ホームという条件は、展示車両の反対側で転落するリスクをなくしており、列車の運行本数が減ったことにより、極力2番ホームを発着に使わないようにすることで、撮影者の転落事故防止が徹底されていました。
2番ホームには安全を監視する係の方がいたほか、ポイント通過の影響で進入速度も遅く、好条件が揃っています。

今回は活用されていませんでしたが、駅構内のコンコースや駅前も広々しているため、こういった場所に物販のブース等を配置することもできそうです。
コンコースは屋根があり、天候に左右されることもありません。
気になるのはトイレの配置ですが、今回も誘導には気を使っており、大きなトラブルはなかったように思います。

運用がない車両や、引退を控えた車両と気軽に触れ合う機会として、唐木田には今後も利用価値がありそうです。
親子が車両と触れ合う場所としても最適であり、続く展開に期待したいと思います。

おわりに

終着駅の唐木田まで乗ってもらうことで、小田急には運賃収入の発生という面でもメリットがあります。
せっかく広いスペースがある駅ですから、今後もイベントで活用する価値は十分ありそうです。