合計16両が譲渡され、富士急行(現在の富士山麓電気鉄道)で5700形として活躍した元小田急の2200系列。
晩年は同一のグループとしてまとめられていた4形式が揃い、小田急ファンには嬉しい展開となりました。

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移籍したのが16両なのに対して、4形式が揃うという面白い状況となった富士急行ですが、なぜそのような展開になったのでしょうか。

富士急行に移籍した8編成

様々な経緯で登場しつつも、最終的に全ての編成が全電動車の2両編成に整理された2200系列は、1982年から廃車がスタートしました。
廃車後は富士急行に16両、新潟交通に2両が譲渡されて活躍しますが、18m級車体の高性能車という条件が、地方私鉄にとってはありがたかったのでしょう。

小田急では2200系列としてまとめられていましたが、実際には2200形、2220形、2300形、2320形の4形式を総称したもので、細部に違いがある小田急の中では面白い形式群でした。
2200形が18両、2220形が16両、2300形が4両、2320形が8両、合計46両の在籍でしたが、富士急行にはこれらの4形式全てが譲渡され、5700形としてまとめられています。

富士急行での編成と、小田急時代の編成を結び付けてまとめると、以下のとおりとなります。

【1982年】
5701F:元2301F
5705F:元2303F
5707F:元2211F

【1983年】
5711F:元2325F
5715F:元2327F

【1984年】
5717F:元2223F
5721F:元2225F
5725F:元2227F

譲渡は3回に分けて行われ、結果的に全ての形式が揃うこととなりました。
鉄道ファンのために全形式を揃えたのではないかと思ってしまうぐらい、16両という限られた両数の中で全てが揃うという、やや不思議な現象が発生しました。

2200系列が全形式揃った謎

意図的に全形式を揃えた可能性を完全否定はできないものの、わざわざそんなことをするのかといえば、やはり考えにくいというのが実際のところでしょう。
何らかの理由があり、結果的に全形式が揃ってしまったものと思われますが、どのような経緯だったのでしょうか。

晩年の2200系列は、2両を複数編成繋いで使用されており、多くが6両を組んでいました。
廃車についても6両単位で行われることが基本で、新造車に置き換えられていくこととなります。
置き換えは2200形と2300形からスタートしましたが、廃車は編成順とはなっていません。

2200系列がどのような順番で廃車となったのか、廃車日単位でまとめると、以下のようになります。
太字は富士急行に譲渡された編成を示します。

2211F:1982年8月31日
2301F:1982年8月31日
2303F:1982年8月31日

2201F:1983年6月30日
2203F:1983年6月30日
2205F:1983年6月30日

2207F:1983年7月31日
2209F:1983年7月31日
2213F:1983年7月31日

2215F:1983年8月31日
2325F:1983年8月31日
2327F:1983年8月31日

2233F:1984年5月9日
2225F:1984年5月9日
2321F:1984年5月9日

2217F:1984年6月30日
2221F:1984年6月30日
2223F:1984年6月30日
2225F:1984年6月30日
2227F:1984年6月30日
2229F:1984年6月30日
2231F:1984年6月30日
2323F:1984年6月30日

結果はこのようになりますが、小田急の都合を優先しつつも、富士急行の事情に合わせたと思われる面も見え隠れします。
1982年に譲渡された3編成が興味深く、4両しか在籍していなかった2300形を優先して廃車しつつも、2211Fという2200形では後半の編成が選ばれています。
これは電気連結器が装備されている編成を選定したと考えられ、2300形が選ばれたのもそれが理由なのかもしれません。

1983年は2編成の譲渡ですが、既に譲渡されている2200形を避け、ここでは2320形が選ばれました。
電気連結器を装備した編成はあったものの、前面が非貫通であることや、後に足回りを2220形や2320形と揃えたことを踏まえると、意図的に2200形は避けたものと考えられます。

3編成が譲渡された1984年は2220形が選ばれ、ここで4形式全てが揃うこととなります。
この時点で2320形は4両しか残っておらず、形式が揃えられる2220形が選ばれたものと思われますが、気になるのはなぜ2221Fが飛ばされたのかという点です。
これは電気連結器を装備している車両の向きが関係していると考えられ、偏らないように配慮した可能性が高いといえます。

富士急行に譲渡された16両という両数は、2220形の総両数と完全に一致しているため、なぜ揃えなかったのかという疑問が浮かびます。
これについては、小田急で廃車となるタイミングと、富士急行が入線させたいタイミングが合わず、したくてもできなかったということなのでしょうね。

おわりに

廃車のタイミングや搭載する機器の関係で、2200系列の4形式が揃うことになったものと思われる富士急行の5700形。
現在も20000形(RSE)とJR東海の371系が揃っており、小田急ファンにとってはありがたい鉄道会社といえそうです。