回送列車等の一部を除き、現在もワンマン運転は行わず、車掌が乗務して運行されている小田急。
車掌が乗務中にすることは多岐に渡りますが、駅で車両のドアを開閉する姿は、利用者にとっても身近なシーンとなっています。

電車を発車させる前には、安全を確認しつつ車掌が車両のドアを閉めますが、その際に何かを叫んでいることに気付きます。
小田急の車掌は、ドアを閉める前に何と叫んでいるのでしょうか。

ドアを閉める緊張の一瞬

スイッチを操作すれば車両のドアは開閉できますが、それだけで済むほど簡単なものではありません。
私自身が車掌の業務を経験していないので、あまり勝手なことを書くわけにはいきませんが、一つ間違えれば事故にさえ繋がってしまう緊張感のある業務なのです。

小田急の車掌が駅でどんなことをしているのか、まずは簡単におさらいしてみましょう。
乗務する車両が駅に到着して停まると、車掌は停止位置が正しいかを確認し、問題がなければドアを開きます。
停車中には、駅係員がサポートしつつ行う身体が不自由な方の乗降、車内清掃や忘れ物の捜索等が入ったりもしますが、ホームを見守りつつ発車時刻を待つこととなります。

発車時刻が近付くと、車掌は車両が発車できる状態にするための安全確認を始めます。
混雑等で乗り降りが遅れている場合には、空いているドア口の利用を促したり、乗降促進放送と呼ばれるメロディーを流したりして、発車時刻が近付いていることを乗客に伝えつつ、ドアを閉める準備を進めますが、そのタイミングを都合よく見つけるのは簡単なことではありません。

ホーム上にあるモニタと目視を組み合わせ、閉められる一瞬を見逃さずに車掌はスイッチを操作します。
駆け込み乗車等があればドアを開きますが、多くの場合には10両で40ヶ所にもなるドアは見事に閉まり、まさに職人技といえるでしょう。
人や物が挟まっているドアがないかを確認し、点字ブロックよりも車両側に人がいなければ、車掌は運転士に発車が可能なことをブザーで知らせます。

小田急の車掌は何と叫んでいるのか

一通りの流れを見てみましたが、その中であえて触れなかったことがあります。
車掌がドアを閉める前に、何かを指差しながら叫んでいるのですが、このシーンを見たことがある方は多いのではないでしょうか。
この行為は指差喚呼という安全確認の手法ですが、ドアを閉める前に大切な確認が一つあり、それに伴って行われています。

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車掌が見ているのは、この写真にある上屋からぶら下がっているランプで、これを指差しながら声を出して確認しています。
このランプは出発反応標識と呼ばれ、ホームの先にある信号機が進める状態になっていると点灯し、車両が発車可能であることを知らせているものです。
新百合ヶ丘の場合には、小田原線と多摩線の両方に出られるため、この写真は多摩線のホームから小田原線に向かう信号が開通していることを示しています。

なぜこの確認が重要なのかというと、信号が赤の状態でドアを閉めても電車は発車できないためです。
そのような状況を避けるために、出発反応標識をしっかりと確認し、発車できる状態になってからドアを閉めています。

確認時に車掌が発する言葉は、「反応進行」や「出発反応進行」で、人によって発声の仕方は様々です。
これがまた十人十色で面白く、そんな姿に幼少期は憧れたものでした。

おわりに

出発反応標識を確認し、安全を確認しつつドアを閉めるという車掌の重要なお仕事。
あんなにも多くのドアを、沢山の人が乗り降りする中で閉める行為は、きっと想像以上に大変で緊張感のあるもので、それを駅ごとにこなしていることには本当に頭が下がりますね。