2023年12月10日に惜しまれつつ運行を終了し、小田急線上から姿を消した50000形(VSE)。
定期運行の終了後には波動用として残り、1年半以上も高頻度で運行され、多くの出会いや笑顔を生み出しました。

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VSEロスのような現象さえ発生している状況ですが、最後の活躍では波動用車両の可能性も感じられ、何かの未来に繋がってくれたらと思いました。

波動用として残ったVSE

2022年3月11日に定期運行を終えたVSEは、波動用車両としての忙しい日々が始まりました。
定期運行では新宿から箱根湯本までを往復する日々でしたが、臨時列車への充当により江ノ島線や多摩線に入線する機会が増え、それまでとは違った姿を見ることができるようになります。

VSEの運行スタイルは主に二つあり、小田急トラベルによるツアー列車か、個人を対象とした貸切列車となっていました。
この二つが組み合わさることで、週末を中心にかなり高頻度で運行されることとなり、定期運行を引退した後の余生とは思えない活躍ぶりでした。
過去にも3000形(SE)、3100形(NSE)のゆめ70、7000形(LSE)で波動用としての活躍がありましたが、こんなにも高頻度で長期間に渡って使われたケースはありません。

波動用としてのVSEが凄かったことは、ツアー列車が毎回盛況であり、かつ貸切列車もかなりの本数が運行されたことです。
個人を対象とした貸切列車のプランが発表された際、そんなに多くは走らないだろうと思いましたが、予想をはるかに超える方々が利用し、そのエネルギーには大変驚かされました。

定期運行からの引退は残念なできごとでしたが、VSEと深く触れ合える時間が長く設けられたという点においては、後夜祭的な価値があったように思います。
小田急と利用者の距離が縮まるような、素晴らしい時間であったといえるでしょう。

小田急に波動用車両が存在する価値

使われた車両がVSEだったからというのはもちろんありますが、条件さえ整えば小田急にも波動用の車両が存在する価値を示したという点で、引退後の活躍は貴重な実績を残しました。
通勤型車両では難しく、ロマンスカーでも車両次第というところではありますが、波動用の車両が在籍する状態は悪くなさそうです。

仮に小田急で波動用の車両を設定するとなった場合、車両を新造するというのは厳しいと思われるため、古い車両を改造することにはなってしまうのでしょうが、4両か6両程度の規模で車内設備をゆったりとしたものに変更し、残すという選択肢はありなのではないでしょうか。
このような事例がNSEのゆめ70でしたが、時代背景の違いやノウハウの不足なのか、VSEほどの盛り上がりではありませんでした。

どのようにすれば成り立つのかという点では、車内の設備に改良を加え、企画列車や団体輸送に使いやすい車両とすることで、一定の需要はありそうに思いました。
VSEは車両自体の魅力もありましたが、それを通じて人と人との交流が生まれたことも大きかったと考えられ、内容や企画次第では継続的な可能性もありそうです。

波動用車両の使い方としては、VSEのような企画性のあるツアー列車はもちろんのこと、需要期には臨時列車として運行することもできます。
個人や団体の貸切も可能なようにしておき、幼稚園や学校が借りられるようにしても面白いでしょうし、これもまた子育て支援になりそうです。

他社のケースでは、食事を提供する車両が多くありますが、用途が限られてしまうという点で、小田急の場合には少々厳しいかもしれません。
路線の距離がそこまで長くないため、そういった使い方自体は想定するものの、ある程度企画列車や貸切列車に軸足を置いた仕様の車両がよさそうです。

現状でいえば、未更新のままで残る30000形(EXE)が改造の最有力候補となりますが、ある程度の改造は必須になります。
展望席がないというハンデがあるため、車内外を改造することで、波動用車両としての魅力を付加する必要があるでしょう。

勝手なことを言うのが許されるのであれば、それこそ岡部憲明氏であれば、利用シーンも含めたデザインをして下さるように思います。
1年半と少しの時間は、小田急を利用する方々にとってかけがえのない楽しい時間でもありました。

おわりに

VSEという車両を通じて、鉄道ファンのみならず多くの方々に交流の機会が生まれました。
せっかくの流れをこれで途絶えさせず、新しい未来に繋げられたら、それはまた素晴らしい取り組みになるのではないでしょうか。