百合丘団地の入居開始に合わせて開業し、掘割部に橋上駅舎を設けた構造に特徴がある百合ヶ丘駅。
南口はそのままフラットに駅前広場へと繋がりますが、そこにゆりストアというスーパーマーケットがあります。

建て替えのため現在は休業中で、既に昔ながらの建物はなくなっていますが、百合ヶ丘駅と歩んできたともいえるゆりストアは、どんなスーパーマーケットなのでしょうか。

百合ヶ丘駅と歩んできたゆりストア

戦後生まれの百合ヶ丘駅は、1960年3月25日に開業しました。
団地の建設に合わせて駅が造られるという、当時は比較的よくあったケースですが、向ヶ丘遊園駅を境に風景が分かれていた小田急にとっては、ある種の転換点となった駅の開業でした。

百合ヶ丘駅の開業から遅れること約5ヶ月、駅前にはゆりストアというスーパーマーケットがオープンしました。
ゆりストアは百合ヶ丘産業株式会社が運営しており、開店した当時はゆりが丘ストアという店名でしたが、後に現在の店名に変わっています。

開店当時のスーパーマーケットはまだまだ黎明期で、地元業者とのトラブル等も多かったような時代ですが、団地という新たに人が集まる街だったからか、当初から地元の方々に愛されるお店だったようです。
団地が建設されて人が集まり、鉄道の駅ができて便利になり、スーパーマーケットが繁盛するという、この時代ならではの好循環が生まれたケースだったのでしょう。

クリエイトSDと組んで新時代へ

百合ヶ丘駅とともに誕生したゆりストアは、その後周辺地域を中心に店舗数を拡大していきます。
しかし、そのような動きは他のスーパーマーケットも同様で、当然のことながら競争は激化していくこととなりました。

平成の前半ぐらいだったでしょうか、地域ではかなり見かけるスーパーマーケットでしたが、ショッピングセンターが開業したりといった変化の中で、気付けばゆりストアは少しずつ店舗を減らしていきます。
一時期は小田急の愛甲石田駅にも店舗があったぐらいで、出店範囲も広がっていた印象ですが、地域密着型の強みこそあれど、大手企業の猛攻には苦しめられつつあったのかもしれません。

このままだとなくなってしまうのではないか、そんなことさえ感じるようになった頃、2020年に驚きのニュースを目にします。
それはドラッグストアを運営する株式会社クリエイトエス・ディーが、ゆりストアを買収するというものでした。
やや複雑な感情を抱く展開でしたが、これからの時代を生き抜くためには、これが最良の展開だと感じたのも正直なところで、買収後はクリエイトとの複合店舗化が進み、付加価値が生まれつつあります。

20240223_01

百合ヶ丘駅前の象徴だった本店にも動きがありました。
オープンから60年以上が経過し、建物は老朽化が進行していましたが、一時閉店による建て替えをすることになったのです。
慣れ親しんだ風景が消えるのは寂しいですが、跡地には再びゆりストアが出店し、今度は複合店舗になって新たな歴史を刻み始めることとなります。

おわりに

本店があった場所は既に更地となり、長く変わらなかった百合ヶ丘駅前の風景は一変しました。
建て替えられたゆりストアがオープンした後、百合ヶ丘の駅前がどのような風景になるのか、そんな新たな歴史の始まりも楽しみですね。