現代では当たり前の存在になり、ラッシュ時には信じられないほどの人数が通過しつつも、遅れることなくそれをさばいている自動改札機。
PASMO等のICカード乗車券を使う方が多数派となり、現代ではタッチしながら通過するのが標準スタイルとなりましたが、かつては切符や定期券を自動改札機に投入するのが基本でした。

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小田急では1991年から自動改札機の導入が開始され、1997年に全駅への設置が完了しましたが、それから数年後には、不正乗車を防ぐためのフェアスルーシステムが導入されます。
フェアスルーシステムはいつ導入され、どのような不正乗車を防止できるようになったのでしょうか。

1999年に導入されたフェアスルーシステム

自動改札機の全駅への設置を1997年に終えた小田急ですが、その時点では臨時改札口や連絡改札口に未設置の駅が残っていました。
全駅への設置完了後には、それらの改札口にも自動改札機の導入が進められ、1999年の時点で藤沢駅の連絡改札口を除いて設置が完了し、小田急における有人改札は過去のものとなります。

ほぼ全てが自動改札となったことに合わせ、小田急では1999年4月1日にフェアスルーシステムが導入されました。
事業者によって呼び方は異なりますが、阪急が1994年に導入したフェアライドシステムが元祖といわれており、その後他社にも広がっていくこととなります。

小田急ではフェアスルーシステムと呼ばれますが、これらのシステムは不正乗車を防止するものとなっており、現代においては自動改札機の標準機能となっています。
他社に先がけて導入した阪急では、導入後に不正乗車が明らかに減少しており、それだけ昔は不正が多く行われている状態でした。

不正乗車を防止する入出場記録のチェック

事前に切符を購入せず、ICカード乗車券で鉄道を利用する機会が多くなった現代ですが、自動改札機が普及し始めた頃は、切符も定期も磁気券が基本でした。
今となっては信じられませんが、元々は入出場の情報は記録されておらず、入れる切符なのか、出られる定期券なのか等、そういった情報で通過の可否が判断されていました。

チェックが今よりも簡易的だった背景には、全駅に自動改札機が導入されていなかったことがあげられます。
仮に入出場を記録したとしても、入場か出場のどちらかが有人改札の場合、その機能を活かすことができないばかりか、正しく利用していても引っかかる人が続出するため、導入しようにもできなかったわけです。
見方を変えると、有人改札の機能を機械に変えただけだったことになりますが、人の目がなくなったということを深読みすれば、それ以前よりも不正を行う心理的ハードルは下がってしまったのかもしれません。

不正の方法は色々とありますが、フェアスルーシステムの導入は、キセル乗車の防止に大きな効果がありました。
入出場が記録されるようになったことで、入場と出場で違う乗車券を使うことができなくなったため、定期券や入場券を悪用した不正乗車は、物理的に実行が困難となったのです。

フェアスルーシステムは、不正乗車への対策ばかりではなく、その後はパスネットの導入等にも繋がっていきました。
入出場の記録によって実現できたことは多く、鉄道の利用スタイルを大きく変えるきっかけだったともいえそうです。

おわりに

ICカード乗車券を当たり前のように使っていると、かつては入出場自体が記録されていなかったことが信じられなくなりつつあります。
自動改札機で止められるのは、乗り越し精算をうっかり忘れてしまったり、切符が何らかの理由で詰まった時だったと、懐かしく思い出しました。