箱根登山線内の小田原から箱根湯本にかけて、2025年度にワンマン運転の試験運用開始を予定している小田急。
ワンマン運転を行う路線がないのは、大手私鉄の中では少数派という状態でしたが、グループ会社の路線から実施することとなります。

私鉄各線においては、支線をワンマン化している路線が散見されますが、なぜ小田急ではそれをしなかったのでしょうか。

営業列車でワンマン運転を行わない小田急

新宿から小田原までを結ぶ小田原線を中心に、江ノ島線と多摩線という二つの支線を有する小田急ですが、現在のところ営業列車でのワンマン運転を行っていません。
過去には向ヶ丘遊園のモノレール線でワンマン運転が行われていましたが、やや特殊なケースといえるでしょう。

ワンマン運転が全く行われていないのかというと、そういうわけではないのがやや興味深いところで、回送列車については車掌が乗務せず、運転士だけのワンマン運転が以前から行われています。
これについてはどちらかといえば拡大傾向で、車掌がいない状態で発車していく回送を見かける機会は、以前よりも多くなりました。

全国的に見ると、大手私鉄でワンマン運転を行っていないのは少数派であり、小田急以外には京浜急行と相模鉄道しかありません。
他の大手私鉄においては、1990年代から2000年代にかけてワンマン運転をする路線が増加し、支線や本線系の閑散区間で行われるようになりました。
やや特殊なのが東京メトロですが、ワンマン運転を前提とした設備で建設された南北線のように、都市型ワンマン運転を早くから導入した路線もあります。

小田急がワンマン運転をしなかった背景

ワンマン運転をしてこなかった小田急ですが、他の鉄道会社とは状況が異なっていたという背景があるものと思われます。
設備が充実している地下鉄を別として、都市型ワンマン運転が行われている路線を確認していくと、どの路線も2両や4両といった編成が中心です。
全てが同じ条件ではないものの、利用者が少ない、路線が短いといった前提があり、そこに編成の短さが加わるケースが多いといえます。

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路線の短さといった点では、多摩線が小田急の中では該当しますが、編成は6両以上と長く、利用者も極端に少なくはありません。
小田原線との直通運転も行われ、10両が走るケースも多いことや、混雑する時間帯もあることから、ワンマン運転の導入は容易ではなさそうです。

ワンマン運転を行う場合には、車両もある程度固定する必要がありますが、支線等を中心に走るグループ自体は存在したものの、それらを改造して特定区間に集めるほどのメリットはなかったと思われます。
車両自体も電磁直通ブレーキだったりと、ホーム柵やホームドアとの相性も悪く、6両以上が基本となる小田急においては、合理化という面でのメリットが希薄でした。

江ノ島線については、終日に渡って各駅停車も混雑しており、快速急行や特急が走る状況下において、ワンマン化の余地はなかったといえます。
JR東日本の湘南新宿ラインとの競争もあり、合理化よりも改善を進めた路線でもありました。

別の視点では、小田急が安全をかなり重視する鉄道会社というのも影響していそうです。
発車前に念入りな安全確認を行い、車両を慎重に駅から出すといった運用を踏まえれば、末端区間も含めて、ワンマン運転をしやすい条件が揃う路線はなかったように思います。

条件が揃わなかった小田急ですが、世の中の事情が変化してきた影響は大きく、労働人口の減少に直面する中で、将来的にはワンマン運転が導入される可能性が高くなってきました。
箱根登山線内での試験運用を皮切りに、設備で安全面のバックアップを行いつつ、ワンマン運転を導入する日が訪れることになるのでしょう。

おわりに

全線をワンマン化するようなことは難しいでしょうが、小田原線や江ノ島線の末端区間等は、将来的にワンマン化される可能性がありそうです。
時間帯を絞っての多摩線での実施や、ホームドアの設置に合わせて、小田原線の各駅停車等でも行われる可能性がないとはいえず、未来の小田急はどんな路線へと変化していくのでしょうか。