かつては輸送上の境界となっていた駅で、現在は主に準急や急行の折り返しが行われる小田急の向ヶ丘遊園駅。
開業当時からの駅舎が現在も残っており、それを逆手に取ってレトロなイメージに仕上げられています。

そんな向ヶ丘遊園駅ですが、南口側にはロータリーに繋がる不思議な配置の道路があります。
中央分離帯ではなく、道路に挟まれて駐輪場が配置されていますが、なぜこのような不思議な状態が生まれたのでしょうか。

道路に挟まれた不思議な駐輪場

開業時からの駅舎が存在する北口側が注目されがちな向ヶ丘遊園駅ですが、南口側にも興味深いスポットが存在します。
北口とは異なり、駅前には小規模なロータリーがありますが、そこを抜けた先に不思議な配置の道路が見えてきます。

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問題の場所はこのようになっており、一方通行の道路に挟まれて駐輪場が配置されているというものです。
横断歩道も途中で切れてしまう配置で、将来的に車線を増やすことを想定しているかのような幅がありますが、そういったものではありません。

元々は自転車のみの駐輪場でしたが、現在はバイクも停められるようになっており、それぞれで一時利用と定期利用ができるようになっています。
屋根が設けられているほか、どちらの車線にも出入りがしやすいため、使い勝手はよさそうです。

廃止されたモノレールの跡地

少々もったいぶってしまいましたが、道路と駐輪場が不思議な配置となっている理由は、かつてここにモノレールの駅があったことによるものです。
古くから沿線にお住まいの方の間では常識かもしれませんが、駅と同名の遊園地に向かう足として、向ヶ丘遊園から向ヶ丘遊園正門までの1.1kmを結んでいました。

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2両編成の車両は独特なデザインでしたが、実験用の試作車両を購入したという経緯があり、小田急独自の車両ではありませんでした。
生え抜きの車両ではなかったものの、ロマンスカーやバスをイメージさせるカラーリングだったためか、それほど違和感はなくむしろなじんでいたようにさえ思います。

1966年の開業から主に入園客の足として親しまれましたが、車両に致命的な損傷が発生していることが2000年に発覚し、再起することなく2001年に路線自体が廃止されました。
廃止前から軌道の下には駐輪場がありましたが、現在も道路に挟まれたまま活かされており、不思議な配置として現在まで残っています。

おわりに

ほとんどの構造物がなくなり、廃止からの年数も経過したことで、人々の記憶からは失われつつある向ヶ丘遊園モノレール線。
昔はこのような短距離のモノレールが他にもありましたが、小田急と同じく廃止の運命を辿ってしまい、一つの時代が終わってしまったといえそうです。